423 エイムとゾンビ
私は走ってよろず屋に向かっていた。
もう、昼ごはんを食べて、ホットケーキも食べて、ゆっくり休み、庭に椅子を出してひなたぼっこをしてうとうとと、昼寝までしてしまっていた。
なにも決めているわけではないけれど、なんとなく、スライムさんを待たせてしまっている気がしたのだ。
道の曲がり角、すこし大きめの茂みがあって見通しが悪いところを急いで曲がったら誰かにぶつかった。
「ごめんなさい!」
私はすばやく頭を下げて立ち去った。
ぶつかったといっても肩が当たったくらいのことだったけれど、相手の男の人は、ううう、とちょっと、うなっていたから、気分を悪くしてしまったかもしれない。
さらに走っていくとよろず屋が見えてきた。
すこし手前で私は歩くことにした。息を整える。
どうして走ってきたのかきかれたら、答えられない気がしたからだった。
でもなんだか、ゆっくり歩いても息は切れたままだった。
お店に入ると、スライムさんがカウンターの上にいた。薬草を食べている途中だったようだ。
「こんにちは、はあ、はあ」
「いらっしゃいませ!」
スライムさんは笑顔から、ふしぎそうな顔に変わった。
「どうかしましたか?」
「え? ううん、べつ、に」
「たいちょうが、わるそうですけど」
「そう、かな? はは、はは」
「あっ、けがしてますよ!」
スライムさんに言われて気づいた。
腕の、肘のあたりで服がちょっと切れている。
切れているところを指で開くと、その下の肌に指一本分くらいの長さで、赤い線が書かれたように血がにじんでいた。
「あれ、本当、だ……」
それに、なんだか肌の色がなんというか、いつもよりも、灰色っぽくなっているように、見える、というか……。
「やくそうどうぞ!」
「薬草」
ケガをしたなら薬草だ。
「でも、薬草って、食べて、効くん、だっけ……」
「やくそうは、なんでもききますよ!」
スライム、さんは、元気に、言った。
「そっか……」
私は、一歩、歩くのも、体が、重く、感じた。
「えいむさん?」
スライム、さんが、ふしぎ、そうに、して、いる。
「うううう」
私は。
わた、し、は……。
なに、を……。
「うううう」
して、いたん。だっ……。
け……。
かゆ、 うま……。
「えいむさん?」
はっとした。
スライムさんが心配そうに私を見ている。
「あれ? なんだっけ?」
「えいむさんが、きゅうに、だるそうに、やくそうをたべてましたよ?」
そうだ。
なにも考えられなくなってきて、体が重くなって、それで……。
手には薬草があった。
「薬草を食べたんだっけ?」
「そうですよ! もう、えいむさんは、うっかりさんなんだから!」
スライムさんは笑った。
「そっか」
腕の傷を見る。さっきまでと変わらず血がにじんでいる。血は止まっているけれど。
肌の色はいつもどおりに見える。
「服が切れちゃったね」
「どうしたんですか?」
「ちょっと、走ってたら誰かにぶつかっちゃって」
「そうだったんですか」
「そういえば、その人も体調が悪そうだった」
「じゃあ、やくそうを、もっていってあげますか?」
スライムさんの言葉を名案だと思った。
「そうだね。そうしよう」
「はい!」
「じゃあちょっと行ってくるね」
「はい!」
私は薬草を持って走り出した。
傷がすぐ治るわけではないけど、体調が悪いのがすぐに治るんだ。薬草は便利だな。




