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422 スライムさんと忘れた

「あれ」

 スライムさんと薬草を食べていたときだった。

 私は、なにかを思い出した。

 急に声を出した私に、スライムさんはおどろいたのか私を見て止まった。そのとき、口からだらりと、たれていた長めの薬草がちぎれて落ちる。


 スライムさんは、カウンターの上で食べていたので高さに余裕があった。私は落ちていく薬草を、床の上ですくいあげるように受け取って、カウンターの上にもどした。


「えいむさん、やりますね!」

「ふふ。さすが私」

「はい! でも、どうかしたんですか?」

 スライムさんは不思議そうにした。


「あ、うん。いま、なにか思い出したんだけど」

「なんですか?」

「うーん。忘れちゃった」

 私は頭をかいた。


「やくそうを、ひろったせいですかね?」

「かもしれない」

「これは、しつれいいたしました」

 スライムさんがていねいに言った。


「いえいえ、私がうっかりしていたもので」

「ぼくが、かわりにおもいだせればいいんですけど」

「さすがのスライムさんも、それはむずかしいよね」

「はい! ……でも、ひさくも、あります」

「秘策? どんな?」

「さっきと、おなじじょうきょうを、さいげんします!」

「なるほど」


 私たちはさっそく薬草を食べてみた。

 食べ終わった。


「わからなかったね」

「はい! そういうことも、あります! ……おや?」

「どうしたの?」

「おもいだしました! えいむさんが、あさから、おみせのそとで、おどってたことって、ありますよね!?」

「なにそれ!?」

 私は記憶をたどってみたけれど、それらしいものは覚えていない。


「じゃあ、きのせいでした!」

 スライムさんは言った。


 私たちは薬草をかたづけて、あいさつをしてお店を出た。

 帰り道、角を曲がったときに、ふと思い出した。

 朝、スライムさんに見られながら、走ったことがあったような。

 体を横向きにして走れるかどうか、ということを検証していた気がする。

 変わった走り方だったから、踊りのように覚えていたのかもしれない。どうだろう。


 たまたま近所の家から出てきた母と会った。

 母と話をしながら家の中に入って私は、あっ、と声を出していた。

 家の中にある植木鉢だ。

 棚に置いてある鉢は、上ではなく、そこからたれさがるように葉っぱが生えている変わった植物だった。

 その様子が、長い薬草を食べて口の端からたれさがっているスライムさんに似ていたのだ。

 母にどうしたのかときかれたけれど、私は笑ってごまかした。


 眠る直前ベッドで、私が踊っていたってなんだったんだろう、とふと思い出した。

 けれどそのままずぶずぶと、沈むように私は眠った。

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