415 スライムさんと黒い箱
「こんにちは。うん?」
お店に入ると、床にたくさん箱がならんでいた。
そんなに大きなものではなく、スライムさんがぴったり入りそうな大きさだ。外が黒くぬられている、木箱のようだった。
「いらっしゃいませ!」
「黒い箱があるけど、なに?」
「これは、さほうです」
「さほう?」
「はい」
私たちは、作法、について確認した。
「作法は、なにかするときの、やりかた、みたいなことなんだね?」
「そうです!」
スライムさんはぴょん、と黒い箱のひとつに飛びこんだ。
「うわあ!」
スライムさんがすぐ出てきた。
「どうしたの?」
「ふたがしまっているとおもったら、あいてました! きゅうに、くらいところにはいって、びっくりしましたよ!」
「それはたしかに、びっくりだね」
「はい!」
「それで、どうしてこの箱が作法なの?」
「!? それはですね。このじきは、くろいはこにいれて、うると、よくうれるらしいんです!」
スライムさんは言う。
「黒い箱に? どうして?」
「それはですね。はなすとながくなるので、みじかくすると……。くろいはこにいれて、うると、よくうれるらしいんです!」
「なるほどね」
「はい!」
「とにかく、この箱に薬草を入れて売ってみる、っていう話かな?」
「さすがえいむさん! はなしがはやいです!」
「じゃあ手伝うね」
「ありがとうございます!」
スライムさんが、また別の箱に飛びこんで声をあげた。
「それで、どれくらい薬草を入れるの?」
「ふふ。50ごーるどぶんの、やくそうをいれて、30ごーるどでうりますよ!」
「おお。常識的な、価格だね!」
「はい! ぼくだって、できるんですよ!?」
スライムさんの成長に、私は大きくうなずいた。
「じゃあ、じゃんじゃん繁盛しちゃうね!」
「はい!」
私はふと思った。
「ところで、この箱って無料じゃないよね?」
「はい! いきのいい、くろばこです!」
「いくらくらい?
「30ごーるどくらいです!」
おや?
「じゃあ、80ゴールドぶんを、30ゴールドで売ることになる……?」
私が言うと、スライムさんは笑った。
「はっはっは、えいむさん。おもしろいことをいいますねえ! そんなこと……、おや?」
スライムさんは、困ったような顔になった。
「どうしてこうなったんですかね?」
「もう一回、考え直してみようか?」
「うーん……、はい!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
また箱に入ってしまって、飛び出してきた。
「まっくらで、びっくりしました!」
「そうだね、びっくりしたよね」
「はい!」
「……ん?」
私は考えた。
「真っ暗って、どういうこと?」
「くらいっていうことですけど?」
スライムさんは言う。でも。
「上が開いてるから、そんなに暗くないよね?」
大きさはスライムさんがぴったり入りそうなくらいだ。
「たしかにそうですね?」
スライムさんが傾く。
私は、箱に手を入れてみた。
「わっ」
手の、箱に入っている部分が黒くなった。
おどろいて出すと、黒くない。
入れてみると、黒い。
スライムさんと、薬草を入れてみる。
黒くなった。出すと、元通り。
「これは……?」
「はい!」
私たちは、中に入れると黒く見えるようになる箱として売った。
2日で全部売れた。




