410 エイムとのど痛
私が無言で入っていくと、スライムさんが、ぴょん、とカウンターに乗った。
「いらっしゃいませ!」
私は軽く頭を下げると、スライムさんが、おや? という顔をした。
私はカウンターに紙をおいた。
のどがいたくて しゃべりにくい
スライムさんは、ふむふむ、と見た。
それから、体をかたむけた。
「よめませんねえ」
スライムさんは言う。
うっかりしていた。私向きで置いてしまった。
すぐ紙を反転させようとしたら、スライムさんが前に出て、紙の上に乗ってしまう。
「えいむさん、なんてかいたんですか?」
それは、と言おうとしたけれど、私の口から出たのは、ぞでばあ、というような、にごった音だった。
「えいむさん!? びょうきですか!?」
スライムさんは、カウンターからおりると奥に消えていった。
病気は病気だけれど、のどが痛くて声が出しにくいだけだから、それに効く薬草をもらえればいいのに。
「もってきました!」
スライムさんが、頭の上にキラキラ光る薬草をのせていた。
「これさえあれば、しんでも、いきかえれます!」
私は首を振った。
「ごんがに、ずごぐがぐでも」
「えいむさん! しゃべらなくていいですよ!」
スライムさんは、優しくほほえんだ。
私は自分ののどを指して、首を振った。
スライムさんはふしぎそうにする。
「のどですか?」
私はうなずいた。
「それはわかってますよ! のどにも、ききますよ!」
いやですねえ、とスライムさんは笑う。
もちろん治ればいいのだけれど、とんでもない値段がするに決まっている。
私は、手のひらを下に向けて、おさえて、おさえて、というように動かしてみた。
「……? のどいがいも、きになるところが?」
私は首を振った。
「した? おやすく、っていうことですか?」
私はうんうん、と大きくうなずいた。
「えいむさんは、いつも、おやすいほうがいいっていいますからね! でもいいんですよ?」
私は首を振る。
「わかりました! じゃあ、おやすいものを!」
私はほっと息をはいた。
スライムさんが奥に行くと、銀色の薬草を頭にのせてやってくる。
もう高そうだ。私は首を振った。
「えいむさん? これは、ちょっとにがいですけど、よくきくやくそうですよ?」
私は、おさえて、という動きをした。
「にがみを、おさえたいですか? もう、えいむさんは、こどもなんですからあ」
スライムさんは笑いながら奥に消えた。
「じゃあ、これはどうですか!」
今度はまっしろの薬草だ。
高そうな気がする。
「これは、あじもしないですし、いろいろなところに、よくききますよ!」
「のどだけ、だから」
つい黙っていられず、ささやき声を出した。
すると小さい声だけれど痛みもなく、ふつうに話すことができた。
「えいむさん!? しゃべれましたね!」
「ささやきなら、平気みたい」
「じゃあ、これをたべて、はやくよくなってください!」
「どうせ何万ゴールドもする高いやつでしょう? もっと安いのを買うよ」
「えいむさんがよくなることが、ゆうせんです!」
「ありがとう。でもよろず屋の経営も大事だからね」
「はい!」
私はふと思った。
「ささやけばいいなら、無理して治そうとしなくても平気かな?」
「だめですよえいむさん!」
「でも、のどが痛いだけだし」
「そのゆだんが、あれです! ……しに、いたります!」
「死に!?」
「はい!」
「わかった。じゃあ、いったん、ふつうの薬草を試してみようかな?」
「はい!」
私は、どうですか? どうですか? とスライムさんに間近で見られながら薬草を食べた。




