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405 スライムさんと季節の変わり目

 スライムさんが、お店の近くの草原を、ひょこひょこ動いている。

 止まって、ひょこひょこ。

 また止まってひょこひょこ。


 見ていると、一定の範囲内で、移動をくりかえしているようだった。


「こんにちは」

「こんにちは!」

 スライムさんが、ぴょん、ととんだ。


「なにしてるの?」

「えいむさんも、かくにんしてみますか?」


 私は、スライムさんと一緒に、草原をひょこひょこ歩いた。


「さいしょは、ここです」

「うん」


 私は10歩くらい歩いた。


「そして、ここです」

「うん?」

「なにか、きづきましたか?」

「うーん。なんだか、涼しい?」

「!」

 スライムさんは、ぴょん、ととんだ。


「ぼくも、そうおもいます!」

「そうだよね」


 最初の場所はすこしあたたかいというか、蒸し暑い感じだった。

 でもここは涼しい風が抜けていく。


「これ、もしかして、なんですけど」

 スライムさんが言う。

「なに?」

「きせつの、かわりめ、じゃないですか?」

 スライムさんは、きりっ、とした。


「なるほど。季節の変わり目。たまに聞くね」

「はい!」

「こんなふうになってるんだね」


 私は何度か、季節の変わり目を往復してみた。


 涼しい。

 暑い。

 涼しい。

 暑い。


「このへんかな」

 私は草原に膝をついて、思いっきり両手を広げてみた。

 すると。


「えいむさん? どうしたんですか?」

「左手が暑くて、右手が涼しい気がする」

 そんなにはっきりとした感覚ではないけれど。


「すごい! ぼくも!」

 スライムさんが私の前にやってくる。

 じり、じり、と左右に動く。


「どう?」

「うーん。はっきりしませんねえ」

「そうだよね」

 スライムさんの体は小さいから、右側で涼しさを、左側で暑さを感じるというのはなかなか難しいだろう。


「どうしたらいいかな?」

「これが、ぼくの、げんかい、ですね……」

 スライムさんの背中がさびしげだった。


「スライムさんって、のびるよね?」

「はい!」

「じゃあ、ちょっと引っぱってみる?」


 私はスライムさんの右側を持って、引いてみた。

 ぷよぷよと弾力があって、のびそうな感じはしない。


「だめ、ですね……」

「あ、そうだ」

 私はお店の裏から、バケツに水を入れて持ってきた。


 それを小さなコップで、すこしずつスライムさんに水をかけながら、ちょっとずつ引っぱってみる。


「のびた」

 にゅ、にゅ、にゅ、とスライムさんの体がのびてくる。


 水をかけて引く。

 水をかけて引く。

 気づくと、スライムさんの右側の一部が、私の身長よりも長くなっていた。


「すごくのびたね!」

「はい!」

「スライムさん、そこ、動かせる?」

「……はい!」

 のびた先の部分が、ぴょこ、とちょっとだけ動いた。


「動いた!」

「はい!」

「これで、奥のほうの掃除もやりやすくなったかな?」

「あー。ちょっとしかうごかないので、むりですねー」

 スライムさんが感情のない声で言った。


「涼しさはわかる?」

「はい!」

 ぴょこん! と先っぽが大きく動いた。


「できるね」

「……む、ぐぐぐぐ!」


 スライムさんが力をこめると、のびた部分がしゅるしゅる縮んだ。


「あっ!」

「もう、だめですね?」

 スライムさんが、にこっとした。


「季節の変わり目は?」

「あっ」


 私たちはもう一回、スライムさんの体をのばした。


「変わり目、わかる?」

「はい!」

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