399 スライムさんと亡霊サンドイッチ
「今日も暑いね」
私はお店に入ってすぐ、つい言っていた。
「あついですね。あつくすぎて、あつくないかもしれないくらいですね!」
スライムさんは、きりっ! とした。
「暑いのを忘れると、涼しいだけが残るってことか。高等技術だね!」
「ふふふ! こうとういむです!」
スライムさんは、ますますきりっ! とした。
「でも、ぼくは、べつのすずしさを、よういしましたよ……」
スライムさんは、いつもより小声で言った。
「えいむさん、ゆうれいは、すずしくなりますよね……?」
「そう聞くね」
「でも、ゆうれいは、じゆうには、だせませんよね……?」
「そうだね」
「そこで、さんどいっちの、ぼうれいを、よういしました……」
「サンドイッチの亡霊?」
「そうです……」
スライムさんは、サンドイッチを出してくれた。
三角に細かく切り分けられた、一口サイズのサンドイッチだ。
パンに、レタスがはさまっているように見える。
「たべてみてください……」
「いいの?」
「はい……」
私はサンドイッチを食べてみた。
「おいしい。ん?」
なんだか、これは……。
「どうですか……?」
「なんだか、食べたことがあるような味が、一瞬したような」
「そうなんです!」
「これは……。ハムサンドとか、そういうやつかな?」
「はい!」
サンドイッチをひとつ、パンを開いて中を見てみた。
「ん?」
パンにはピンク色のソースがぬってあって、その上にレタス、という順番だ。
さらにレタスにもなにか、きいろっぽいものがぬってある。
「ちょっと、ピリッと辛かったのは、これかな」
「たぶんそうです!」
「でも、肉は入ってなかったね」
私が言うと、スライムさんはにやりとした。
「もしかして、これが、亡霊?」
「そうです!」
スライムさんが、ぴょん、ととんだ。
「にくがはいってなくても、たべたしゅんかん、にくのあじをちょっとかんじてしまう。これがぼうれいさんどいっちです!」
スライムさんは言った。
「なるほどね」
「はい!」
「シチューのにおいがするとき、夕ご飯にシチューが出るのも、亡霊かな?」
「そうかもしれません!」
「亡霊を先に味わって、それから本物を食べると、二回お得かもしれないね」
「! ぼうれいからの、ほんもの! べんきょうになります!」
私は、薬草を手に取った。
それをスライムさんの前に出した。
「においをどうぞ」
「? くんくん」
「亡霊薬草のお味はどうですか?」
「なかなか、さっぱりしてますね。あじがないくらいのあじで、すっきりしてます」
「では本物をどうぞ」
私はスライムさんの口に入れた。
「これはほんもののあじ! はっきりしています!」
「どう?」
「にかい、おとく!」
私たちは、亡霊薬草と薬草で、お得に味を楽しんだ。




