398 スライムさんとドミノ
お店でふと、スライムさんの体が箱に当たった。
箱は細長くて紙製だったので、倒れてしまう。運悪く、ならべて置いてあったとなりの箱にぶつかってしまって、どちらも倒れた。
「あー」
スライムさんが残念そうにしていたので、私は立て直した。
「あ! ありがとうございます!」
「いえいえ」
そうしてしばらくして。
「あっ」
今度は、私が、ちょっと足をふみだしたときに箱を倒してしまった。
運悪くぶつかりあって、どちらも倒れてしまう。
私はすぐ立て直したけれど……。
「ごめんね」
「いいですよ! これは、はなのにせものをいれるはこですから、もう、つかいません!」
花の偽物。
「どうかしましたか? えいむさん」
「あ、ううん。そうだ、スライムさん、いらない紙の箱のふたって、ある?」
「ありますよ?」
スライムさんは、箱のふたをのせて台車を押してきた。
十枚くらい積んでいる。私の顔より大きなものばかりだ。
「ありがとう」
「どうするんですか?」
「ならべてみる」
私は、中でも四角いふたを選んでならべてみた。
五枚ならべたところで、箱が倒れてしまう。となりにぶつかると、連鎖して、みんな倒れてしまった。
「あー。ざんねんでしたね、えいむさん」
「残念だけど、残念じゃないかもしれない」
「どういうことですか?」
「いま、順番に倒れたの、おもしろくなかった?」
私が言うと、スライムさんが、ひかえめに笑った。
「じつは、おもしろかったです」
「私がうっかり倒しちゃった残念よりも?」
「へへへ」
スライムさんは、てれたように笑っている。
「だよね!」
「!?」
「実は、倒すためにならべてたんだ。本当は、もうちょっとならべてから倒したかったんだけど」
「!? !!」
スライムさんは、私を見た。
「たのしそうです!」
「ね」
私は、またふたをならべていった。
「とおくまで、ならべるんですか?」
スライムさんが、察して言う。
「うん」
ふたとふたの間をあけて、ならべていく。
四角いふた、七枚がならんだ。
「やったね」
「はい!」
「じゃあ、一緒に倒してみようか」
「はい!」
私は、指先とスライムさんの体が同時になるように調節して、押した。
ぱたぱたぱた、と倒れていって……。
「あっ」
止まってしまった。
届かなかったのだ。
「間があきすぎだったかもね」
「かもしれません!」
「気をつけないと」
と言ったとき。
ふら、と動いた最後のふたが、倒れた。
私はスライムさんと顔を見合わせる。
「風かな?」
最後にふたが倒れたときの風が、最後のふたに届いたのかもしれない。
「ですね!」
「と、いうことは、もっと広くできるかもしれない……」
「! はい!」
「この遊び、もしかして、できるだけ間を広くできたら勝ち、という遊びかもしれないね」
「! えいむさん! みちびき、だしましたね!」
私はスライムさんと確認した。
「これがこの遊びの、真の姿だね」
「はい!」
「もしかして、名前があるのかな?」
「うーん……。はっ」
スライムさんが、はっとした。
「どうかした?」
「これ、なまえを、きいたことがあるきがします!」
「ええ!?」
「おうとから、きた、しょうにんが、いってました!」
「王都。すごいものがたくさんありそうだ……」
「はい! たしか……。じぇんがです!」
「ジェンガ?」
「はい! じぇんがです!」
「そっか。じゃあ、今日はジェンガで遊ぼうね!」
「はい!」
私たちは、ふたの間がどれくらいがいいか、真剣に議論した。




