397 スライムさんとかき氷
「暑いね」
「そうですね!」
熱いといってもいいくらいの暑さだ。
外にいるだけで汗が流れてくる。
かといって、薄着になって腕や足を出すと、肌がじりじりと焼けるようだった。
なんだか、虫も暑さで出てこなくなっているような気がする。
「こういうときは、冷たいオレンジでも食べたいね」
「えいむさん。しょうじきに、なりましょう。ほんとうは、つめたくて、おいしい、こおりがいいんじゃないですか?」
スライムさんが、にやりとした。
「氷は冷たくていいね」
「こおりをたべたくないですか?」
「氷を食べるの? 私はあんまり、氷を口に入れるのは好きじゃないかなあ」
「どうしてですか?」
「かたくて、溶けるまで待ってなきゃいけないでしょう? その間、口の中で溶けるのを待ってるのが、ちょっと好きじゃないんだよね」
「ふ。ふふ、ふふふ」
スライムさんが変な笑いかたをしてお店に入っていった。
「これをみてください」
「なにこれ」
金属の道具だ。
上と横にレバーがついていて、その下に、横があいているけれど箱状になっている部分がある。上の部分にトゲトゲがある。
その下から四本、家具のように脚が生えているような形。
「これに、こうです」
スライムさんは、奥から、真四角の氷がのったお皿がのった、小さい荷車を押してきた。
「これは、こおりの、まほうせきでつくりました!」
「氷」
「このこおりを、あそこにいれてください!」
スライムさんの言うとおり、箱状になっている部分に氷をはめ、上のレバーを回すと、トゲトゲが降りてきて氷をしっかりつかまえた。
氷の下に、氷が乗っていたお皿を置いた。
「よこの、ればーを、まわしてください!」
私は、大きな横のレバーを持った。
「わかった」
回してみるとおどろいた。細かくなった、雪のような氷が降ってきたのだ。
シャリシャリという手応えはわかる、上のトゲトゲで氷を削っているからだ。
と思ったけれど、よく考えてみると、上のトゲトゲで氷を削っても、下には出てこない。
よく見ると、トゲトゲで固定して、氷は回転していた。
そして氷の下の部分に刃があって、そこに当たるようになっている。氷が押しつけられて回転しているので、シャリシャリと削れているのだ。
「すごい仕組みだね」
「はい!」
「これって、理論上は、ナイフで削ってもできるのかな?」
「!? たしかに、りろんじょうは、そうです!」
「すごく、難しそうだけどね」
「はい! すごく、むずかしそうです!」
そう話している間にも、どんどん氷は高くなっていく。
「……できた」
氷がすっかり削れると、小さな雪山ができあがっていた。
「これが、かきごおりです!」
「かき氷?」
「はい! たべてみてください!」
「私が?」
「えいむさんが、つくったので!」
そう言われてスプーンが出てきたのは、すくって口に入れてみる。
ふわっとしていて、ひやっと消えた。
「ふわふわでひんやりしてるよ!」
「そうですか!」
「スライムさんもどうぞ」
私はもうひとつのスプーンで、スライムさんの口に入れてあげる。
「ひやふわです!」
スライムさんが、目をぱちっ! と開いた。
「涼しくていいね」
「はい!」
「……ジャムとか、かけたらおいしいかな」
「!?」
スライムさんが、ぴゅっ、と奥に消えると、頭にビン詰めをのせて、もどってきた。
「おれんじじゃむです!」
「かけちゃおう」
私は大胆に、どっさりかけた。
それを食べてみると。
「おいしい!」
すかさずスライムさんにもあげる。
「おいしいです!」
スライムさんが、ますます目をぱっちり開いた。
もしかしたら、私もこんな顔をしているのかもしれない。
「ジャムだと広がりにくいから、これに、オレンジジュースをかけたらもっとおいしいかもね」
「てんさい!」
スライムさんが奥からオレンジジュースを持ってきたので、私たちはかけて食べた。
「おいしい!」
「おいしいです!」
「これにオレンジの果肉が入ってたら、いいかもね」
「それは……、ないです!」
スライムさんは残念そうに言った。
一番用意しやすそう、だと思うけれど。
「あ、でも、ジャムにちょっと果肉が入ってるから、だいじょうぶかもしれない!」
「だいじょうぶ、ですか?」
「うん! おいしいでしょ?」
「はい!」
私たちはするすると食べてしまった。
「あー、体の中からひんやりするね」
「はい!」
「でも、なんだか、食べ過ぎたらよくない気がするから、気をつけよう」
「はい! 気をつけます!」
「おいしいね」
「おいしいです!」




