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395 スライムさんと海

「えいむさん、うみってしってますか?」

 裏庭で、土がかわいているので、水をあげようかと話しているとき、スライムさんが言った。


「うん。話では知ってる。すごく広い池みたいな感じなんだよね?」

「はい!」

「塩水なんだっけ?」

「そのようです!」

「スライムさんは見たことあるの?」

「ないです!」

「私もー」

 私たちは笑った。


「えいむさんは、きょうみありますか?」

「興味? うーん。泳いだりするって聞いたことあるけど、塩水で泳ぐのって、なんか体がしょっぱくなりそうだよね」

「……はい!」

 スライムさんが、ちょっと、ぶるっ、とふるえた。


「塩イムさんになっちゃったりして」

「!?」

 スライムさんが、ぶるぶるっ、とふるえた。


「……きをとりなおして、です。えいむさん。うみ、みたいですか?」

「海? 出かけるってこと?」

「ちがいます。ここで、うみを、みるんです!」

 スライムさんが、きりっ、と言った。


「どういうことかな?」

「こういうことです!」



 スライムさんと一緒に用意したのは、二杯のバケツ。

 バケツ一杯の水と、バケツいっぱいの塩だった。

「これです」

 スライムさんは言った。


「これ、とは」

 そして、私たちの前にあるのは、ちょっとした穴だ。お店の近くで、バケツと同じくらいの深さの穴を見つけた。

 

 バケツを、その穴に置く。

 そして、たっぷりの塩を入れた。

 棒でぐるぐると混ぜる。


 塩が多すぎて全然溶けきらないけれど……。


「これって、もしかして……」

「そうです。うみ、です!」

 スライムさんは言った。


「しょっぱい、水たまりが、海、というわけ?」

「はい!」

「でも、広くはないよね?」

「……はい」 

 スライムさんは、ちょっと小声になった。


「ざんねんながら……」

「やっぱり、大きいことが海のウリなのかな?」

「とおもいます……」

 私は、考え直した


「でも、いいかもね」

「!? どうしてですか?」

「だって、私たちは、海を知らないでしょ?」

「はい」

「だったら、私たちなりの海でいいんじゃない?」

「!? そんな、ぬけみちが!?」

 スライムさんがふるえた。


「もし、知ってる人に、これは海とはちがうよって言われたら直せばいいと思う」

「! そうですよね!」

「うん!」

「あんしんしました!」

 スライムさんは、にっこり笑った。


「でも、気になることがあるんだけど」

「なんですか?」

「塩を、いっぱい使っちゃって、もったいないかなーって、ちょっと思った」

「これは、たべられない、しおです!」

 スライムさんは、むん、とふくらんだ。


「食べられない塩?」

「はい! うっかり、しょうにんのひとが地面にざらーっ、てこぼして、だめにしちゃったしおを、なんとなく、もらっておいたものです!」

「どうしてもらったの?」

「ふふ。うみが、つくれるかも、という、よそうです……」

「スライムさん。そのときから、計画してたんだね!」

「はい!」

「やるね!」

「はい!」

「あと、安心した!」

「! なによりです!」

 私たちは、穴の中の海を見ながら、薬草を食べた。

 なんだかちょっと、しょっぱく感じた。

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