390 エイムところころ
ころころころころ。
ゆっくりと、玉が転がってくる。
ころころころころ、道の、前のほうから転がってくる。
まんまるだ。
灰色だ。石だろうか。それにしてはきれいだ。
道は奥に向かってすこしだけ上がっている。だから手前の、私が立っているほうへ転がってくるのは不思議ではない。
とも思ったけれど、坂道というほどの角度はない。
それに、土の地面だから、ちょっとしたでこぼこもあるし、ふつうは止まるだろう。
転がってくる玉が私の足元まできた。
私が立ち止まると、玉は私の足にあたって止まった。
玉は、私のこぶしくらいの大きさだ。
私が足をどかす。
玉は動かなかった。
人さし指で、ちょん、と押してみた。
するとどうだろう。今度は、道をもどるように、登るように転がり始めたのだ。
ころころころころ。
私はカメでも散歩させるような速度で追いかけた。
ころころころころ。
道をまっすぐ進んでいく。
分岐点に来た。
玉は、スライムさんのお店のほうに転がった。
ころころころころ。
ゆっくりゆっくり、私はよろず屋に到着した。
「あ、えいむさん!」
スライムさんが出てきた。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ! これはなんですか?」
スライムさんは、自分のほうに転がってくる玉を見た。
段差も登っていく。スライムさんは、ちょっととまどったように、玉の進路を開けた。
玉がお店に入っていく。
「これもスライムさんのお店のものでしょ?」
「しりませんけど」
「えっ」
玉は、カウンターまでたどり着いた。
すると、カウンターを登っていく。玉からしたら絶壁だろう。
なんなく登っていくと、カウンターの反対側へ、ゆっくり、はりつくように降りていく。
その先、壁にそって登りはじめると、天井を伝って、入り口まで上からもどってきた。
入り口の上の部分を通りすぎると、外に出た。
私たちも出る。
ころころころころ。
屋根の上に登っていって、見えなくなった。
私たちは反対側に移動する。
待っていると、お店の裏側に降りてきた。
球は壁を伝って降りてくると、地面についた。
進む。
ころころころころ。
私たちは玉を先頭に、草原を歩いた。
薬草畑をこえて、玉は裏山に入っていく。
山道を進む。
木にぶつかると、木の幹を登っていった。
一番上まで行くと降りてくる。
そうしてまっすぐ進んでいく。
ころころころころ。
「さっきは、私の足にぶつかったら止まったんだよ」
「そうなんですか?」
「うん」
「とめますか?」
「うーん。止めない」
「はい!」
そのうち、ちょっと気を抜いていたら、玉は大きな岩を乗り越えて、小川に入ってしまっていた。
私たちはどうなるかと見ていた。
すると、川の対岸に出てきた。私たちは思わず、わっ、と声をあげていた。
私はスライムさんを抱えて、小川の水面から出ている岩を通って反対側に行った。
「あれ?」
急に玉が見えなくなった。
どこに行ったんだろう。
「あ!」
スライムさんが声をあげた。
私も気づいた。
川の近くには石がたくさんあった。
それは、私たちが追いかけてきた、まんまるの石、そっくりの石がたくさんあった。
「みんなまんまるだね」
「はい!」
「ここに来たかったのかな」
「そうかもしれませんね!」
私たちはその石にさわることはせずに、ちょっとの間、感想を言い合ってから、山を降りてお店にもどった。




