386 孤独のスライムさん
「こんにちは!」
「いらっしゃいませ!」
スライムさんはカウンターから降りてくると、私を通りすぎた。
「えっ?」
「ちょっと、みせばん、おねがいします!」
スライムさんは出ていった。
「店番……」
なにをしよう。
お金のやりとりをしないといけないのだろうか。大金を扱う高価な品物もあるだろう。
私にはなかなか、荷が重い気がする。
おやすみ、という看板を出そうか考えていたら、スライムさんが入ってきた。
「こんにちは」
スライムさんは言った。
「いらっしゃいませ?」
スライムさんは店内を見まわす。
「えーっと……、やくそうをもらえますか」
「はい」
「ここでたべられますか?」
「はい。もちろん」
私はカウンターの中に入って、薬草を出した。
スライムさんはカウンターに乗る。
「いただきます」
むしゃむしゃ。
いつものように食べる。
「しっかりと、そだった、やくそうのあじ。いい。むしゃむしゃたべれる。あきのこない、あじだ。とくべつなあじじゃないけど、うまい。これだよこれ、こういうのでいいんだよ。いや、こういうのがいいんだ」
ぶつぶつ言いながら食べている。
「スライムさん?」
「おみず、もらえますか?」
「はいただいま」
私は外から水をくんできて、スライムさんの前に置いた。
スライムさんはちょっとだけ吸った。
また薬草にもどる。
「みずがひつようかな、とおもったけど、そんなことなかった。みずを、みずにたべられる。みずみずしいって、こういうことか」
「スライムさん?」
「いちまいずつたべてたけど、こんどは、さんまいかさねて、かさねぐいだ」
スライムさんは一気にほおばった。
「おっほっほ。これはすごい。くちのなかが、ぜんぶやくそうだ。たべてもたべてもやくそう。おれはいま、やくそうになっている。どんどんいってしまえ」
スライムさんは、もうほおばっているのに、さらに薬草を三枚口に入れた。
「もぐもぐもぐ。もぐ? もーぐもぐ。もぐもっぐぐ。もぐ。もーぐもぐもぐ」
スライムさんは水を口に含んで食べ始めた。
「むぐ。むっぐむぐ。むぐんむぐんむぐん。むぐぐっぐ!」
なにか、確信めいたものを感じながら、食べている。
「……ふうー。やくそうのたべかたなんて、しれたものだとおもっていたが、まだまだ、あるんだなあ」
スライムさんはそう言うと、私を見た。
「ごちそうさまです」
「あ、どうも、おそまつさまです」
「では」
そう言うと、スライムさんはお店を出ていった。
もどってきた。
「みせばん、ごくろうさまです!」
スライムさはカウンターの上にもどってきた。
「いまのはなに?」
「いまのは、ごろうすらいむ、ゴロイムです」
「ごろうって?」
「なまえであり、やくしょくであり、いきかた。それが、ごろうです」
「すごそう」
「はい!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
「私もゴロウ、できるかな」
「えいむさんですか? うーん……。できます!」
「やった!」
「じゃあ、はいってきてください」
私はいったんお店を出て、入り直した。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ!」
「……薬草をもらえますか」
「はい!」
それから私は、スライムさんの指導の元、ゴロウをして遊んだ。
「ごはんがあると、いいんですけどねー」
スライムさんは言った。
「ご飯?」
「ごろうは、おかずを、ごはんにかけてたべるのが、すきなんです!」
「へえー。絶対?」
「ぜったいではないのが、ごろうの、ぽいんとです。ごろうは、じゆうなんです!」
「ゴロウは奥が深いね」
「はい!」




