381 バニースライムさん
スライムさんの頭に耳がある。
人間のような耳ではなくて、うさぎのような耳だ。ヘアバンドの上に耳が生えているような形になっていた。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ!」
「えっと……。うさぎ?」
「よく、おわかりで!」
スライムさんが言うと、耳がゆれた。
「それはどうしたの?」
「じつは、とかいでは、てんいんに、うさぎのみみがあると、おきゃくさんがたくさんくる、というはなしをききまして」
「そうなんだ?」
ちゃんと、お客さんのことを考えている。よしよし。
「はい。せんようの、ふくも、あるそうです!」
「ふうん」
専用の、うさぎの服。
「どういう服?」
「くわしいはなしは、ちょっと」
「ふうん。……もこもこした、うさぎの毛皮みたいな服かな?」
もこもこしていて、全身がおおわれるような服を想像した。
「なるほど!」
スライムさんは耳をゆらした。
「あったかそう。冬にぴったりだね!」
「ですね! みみなら、えいむさんのぶんも、ありますよ!」
「あるの?」
「まあまあ、そう言わずにどうぞ」
別に遠慮していなかったけれど。
というわけで、私も耳を装着した。
「どう?」
「いいですね! おきゃくさんが、きそうです!」
「私の魅力、感じちゃう?」
「はい!」
「みんな、私に夢中になっちゃうなあ」
「どきどきですね!」
スライムさんが言ったときだった。
お客さんが入ってきた。私の母くらいの年齢の女性だ。
「あら、かわいい耳ね」
彼女は私をちらっと見て、微笑んだ。私も微笑んだつもりだけれど、うまく笑っているかはわからない。
薬草を買って帰っていった。
「ふう」
私は息をはきながら、頭の耳を外した。
「どうしましたか?」
「緊張した」
「きんちょうですか? えいむさんが?」
「うん」
「みんな、むちゅうになっちゃうって、じしん、まんまんだったのに?」
「それは、あれ」
「あれ?」
「うん。あれだから。本当に来たら、あれなやつだから」
「あれですか」
「うん。あれ」
「あれ……」
スライムさんは、くいっ、と耳をかたむけた。
「でも」
私はまた装着した。
近くの盾に映して、自分の姿を見る。
「やっぱり、いいかも」
「おきにいりですか?」
「うん。服も着てみたい」
「もふもふですか?」
「うん。もふもふ」
「ちゅうもん、しておきますね!」
「うん!」
それからしばらくして届いたけれど、注文したうさぎ服と全然ちがう、なんだか布が少ない服が届いたので返品することになった。
うさぎ服、いつ来るんだろう。




