380 スライムさんと土
「こんにちは……?」
スライムさんが店内にいない。
どこだろう。
と裏庭に行ってみたらスライムさんがいたのだけれど。
「なにしてるの?」
私はスライムさんのところに向かった。
スライムさんは、体の下、3分の1ほどが土に埋まっている。
「そだってるところです!」
「ほほう……」
なかなか、むずかしい話になりそうだ。
「どういうことでしょうか、スライムさん」
「きいてくれますか、えいむさん」
「ええ」
「やくそうは、どうしてそだつのか」
「薬草が?」
私は、近くに生えている薬草を見た。
「水をあげてるから?」
「みずだけで、そだちますか?」
「育ってるけど……、たしかに、水だけじゃ育たないよね」
私はあらためて考えてみた。
本当に水だけで育つなら、水の上に浮かべておいても良さそうなものだ。
「水に浮かんでる薬草なんて見たことないもんね」
「ありますけどね」
「あるんだね」
そうなのか。
「でも、ふつうのやくそうは、つちに、はえてますよね?」
「うん」
「ということは。つちは、そだつ!」
「!?」
言われてみればそうだ。
土は育つ。
「土は、育つ!」
「そうです!」
「だから、今日、スライムさんは土の中に!?」
「そういうことです! ぼくも、そだつ!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「育とうとしてるんだね?」
「そうです!」
「そっか。育ってる感じ、する?」
「えいむさん。やくそうは、いちにちでは、そだちませんよ?」
「そうだね。ちょっと、あせっちゃった」
「えいむさんったら」
「そっか……」
「どうかしましたか?」
私は、お店の裏にあるスコップを持ってきて、ちょっと掘った。
そして靴と靴下を脱いだ。
足を穴に入れて、土をかぶせる。
「えいむさん、まさか!?」
「ふふ。私も、育っちゃおうかなって」
「やりますね!」
「ふふ。……ちょっと、ひんやりしてるね」
「はい!」
私は草が生えているあたりにお尻をつけて座った。
「でも、思ったよりは、あったかいかもしれない」
今日は空気が冷たかったので、がまんできないくらい寒いのではないかと思ったけれど、外に出ている手のほうが、いまは冷たく感じる。
「そだちますかね」
「そうだね」
私たちはしばらくそうしていた。
「ねえスライムさん」
「なんですか?」
「どれくらい、こうしてるの?」
「そだつまでです!」
「でも、お店もあるでしょ?」
「それはそうです! えいむさんに、やってもらってもいいですけど」
「私も夜になったら帰らないと」
「そだつまえに、かえるんですか!?」
スライムさんが、ぷるん、とゆれた。
「……私、スライムさんに言ってなかったことがあるんだ」
「なんですか?」
「実は私、土がなくても、ごはんを食べて、寝るだけで、育っちゃうんだよね」
「な!?」
「ふふ、ごめんね」
「えいむさん! やりますね!」
「あと、スライムさんも、ずっと土の中にいなくてもいいんじゃないかな」
「どういうことですか?」
「スライムさんは、草じゃないし……」
「くさじゃ、ない……!?」
「そうそう」
「でも、ぼくは、つちに、かのうせいをかんじています!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「そうだ!」
私はスライムさんに頼まれて、空き箱に土を入れたものをお店の中に持ってきた。
「どっこいしょ」
「おつかれさまです!」
「土は、重い……」
「おつかれさまです!」
スライムさんは、箱の中に入って体を左右にゆらした。
ず、ず、ず、と土の中に入っていく。
「これで、そだちます!」
「よかったね」
「はい!」
「じゃあ」
私は、コップに水を入れてきた。
ちょっとスライムさんの上からかけてみる。
すると、すこしだけ大きくなった。
「どうですか?」
「ちょっと大きくなった」
「育ちました!」
スライムさんは、むん、とふくらんだ。




