378 スライムさんとまずい薬草
「さいきん、まずいやくそうを、てにいれましてね……」
スライムさんが、カウンターで、ちょっと困ったように言った。
「捨てるの?」
「それが……。ちょっと、たべてみてほしいんです……」
「食べるの? だいじょうぶ?」
どういうことだろう。
「はい!」
「これが、まずいやくそうです」
スライムさんが出してきた薬草は、青々としていてきれいに見えた。
「食べてもいいんだよね?」
スライムさんがわざわざ言ってくるのだから、体に悪いとか、そういうことはないのだと思うけれど。
「はい!」
私は、すこしちぎって口に入れた。
ちょっとさくっとした食感で、さわやかな香りがした。
「……おいしい」
「ですよね!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
私は口の中にある薬草を何度もかみながら、このあと、苦味が出てくるのだろうかと待ってみたけれどそんなことはない。たださわやかにおいしい。
「これが、なんと、ひとつ10ごーるどです!」
「ええ? 100ゴールド、ううん、もっとするんじゃない? おいしいレストランのサラダにでも使えそう」
「いいですね! しかも、30にちは、もちます!」
「そんなに?」
「かわいているので、もつ、らしいです!」
私は、さく、という食感が乾燥によるものなのだと知った。
「長持ちして、おいしくて、10ゴールド。これはどういうことだろう」
「それに、まずい!」
「そうだね。どうしてこれがまずいんだろう。他のお店が、評判を下げようとウソをついてるのかな」
「ひどいですね! ……でも、そんなことをいってるのは、このやくそうを、つくってるひと、だけでしたよ!」
ますますわからない。
「こんな薬草が作れるなら、どんどん売ってもうかりそうだけど、そういうわけでもない?」
「はい! あんまり、たくさんは、つくれないみたいです!」
「うーん。これじゃ、仕事もまずい……」
はっ。
「えいむさん? なにか?」
「もしかして、だけど」
「なんですか?」
「経営が、まずい……」
「!?」
こんなにおいしいものを作っておいて、安くすむわけがない。実際、たくさん作れないのだ。
「この薬草を作ってる人は、もっと高く売らないと」
「やすいものを、たくさんのひとに、っていっていましたけど!」
「それは、安くできる場合だけにしないと」
「!? たしかに!」
それから、スライムさんがそのお店に連絡をして、いまではひとつ500ゴールドでも、どんどん売れているのだという。
「よかったね」
「でも、よくわかりましたね! さすがえいむさん!」
「スライムさんと一緒だからね」
「ちょっとよくわかりませんね」
スライムさんは体をひねった。




