376 スライムさんと火事
スライムさんがお店の前にいる。
その前で、なにかが燃えていた。
火はスライムさんの体よりもずっと小さく、いまにも消えてしまいそうだ。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ!」
「燃やしてるの?」
近くで見ると、いくつかの枝が燃えているようだった。
数本が、ある部分に向かって先を積み重ねられるように置いてあり、そこに火がついている。
「えいむさん、これって、かじですか?」
スライムさんは言った。
「火事って燃える火事?」
「はい!」
「うーん、ちがうんじゃない?」
「じゃあ、どういうのが、かじですか?」
「家が燃えてるとか」
「どうしてですか?」
「え?」
「どうして、えだがもえてると、かじじゃ、ないんですか?」
私は考えた。
「最近、火事があったよね」
この先のほうに行くとある農地のひとつで、小屋が燃えたんだという。
近くでしていた、たき火から移ったという話だった。
ぼやだった、と母が言っていた。
「はい! すぐ、きえたらしいです!」
「小屋だったら火事っぽいよね」
「はい!」
「これは、たき火だよね」
「はい!」
「なにがちがうんだろう」
私たちは、考えた。
「やっぱり、建物が燃えてると、火事っぽいのかな」
「かもしれません!」
「ということで、建物がが燃えていると火事、そうじゃないと火事」
「かいけつしました!」
「……」
「……えいむさん?」
私は考えていた。
「山火事ってあるよね」
「! はい!」
「……」
「……」
私たちは考えた。
「どういうことだろう」
「わかりませんね……」
「でも、もしかしたらだけど」
「なんですか?」
「火事、の前に、なにかをつけたら。なんでも火事になるんじゃないかと思って」
「!?」
スライムさんは、びくん、とした。
「それですよ!」
「そうかな!」
「はい!」
「ね!」
私たちは確信した。
「家が燃えたら、火事」
「かじ!」
「山が燃えたら、山火事」
「やまかじ!」
「枝が燃えたら?」
「えだかじ!」
「そう!」
そういうことだ。
火事とは、そういうことだったのだ。
「だから、草原が燃えたら草火事」
「くさかじ!」
「服が燃えたら、服火事」
「ふくかじ!」
「それと……。あ」
スライムさんが始めていた枝火事が、消えていた。
煙が一筋上がって、枝は黒くなっている。
「枝火事終わったね」
「はい!」
「スライムさん、水は?」
「ないです」
「ちゃんと用意しておかないと、山火事になっちゃうよ」
「! あぶないです!」
「じゃあ、とりあえず」
私は、手で近くの地面を軽く掘って、砂をかけた。
何度かくりかえすと、枝が見えなくなってきた。
「お父さんが前に言ってたんだ。水がないときは、土でも消えるって」
「みずは、うらに、ありますよ!」
「うん。ちょっと、やってみたくなって」
「さすがえいむさんです!」
「最後に、水もかけておこう」
「はい!」
私たちはバケツに水を入れて、土の上から水をかけた。
「火の用心だよスライムさん」
「はい! これから、かじをやるときは、あたりがこおりになる、まほうせきを、よういします!」
「水ね」
「はい!」
「じゃあ、やるときは私もいるときにしようか」
「たすかります!」
スライムさんは、縦にのびた。
「ところで、どうして枝火事をしてたの?」
「かじって、かじもありますよね!」
「燃える火事と、家のことの家事かな?」
「はい! いえのかじを、やりたくないとおもっていたら、もやしていました!」
「家事をしたくないから、火事をして、やったことにしようと」
「はい!」
「なかなかやるね」
「めいあんでしょう!」
「でも、代わりにはならないね」
「!?」
スライムさんは、びくっ、とした。
「そうですか……」
「もしかして、そうなんじゃないかとは思った?」
「はい!」
「家事、私も手伝おうか?」
「はい!!!」
私は、店のそうじをすこし手伝った。




