372 スライムさんとカウンター
私は、椅子と、その上に重ねて箱を持ってきた。
それを、スライムさんのお店の、入り口の前に置く。
椅子の前に箱を置いて、私は裏庭に薬草をとりに行った。
10個抜いてきた。それを水で洗って泥を落とす。冷たい。
水を払いながらもどって、箱の上の、ザルの上にならべた。
私は椅子に座る。
しばらくすると、お客さんがやってきた。母と同じくらいの年代の女の人だ。
「いらっしゃいませ」
「あら?」
お客さんは、入口のおやすみ、という看板を見た。
それから、箱の上の薬草を見る。
「今日は薬草だけです」
「あら、そう。じゃあふたつ」
「はい」
私はお金を受け取って、薬草をわたした。
「抜いたのを洗ったばかりで、ちょっとぬれてます」
「あらそう?」
お客さんは、薬草をちょっと振った。
「だいじょうぶ」
そう言って、手さげの中に入れて帰っていった。
私は椅子に座っていた。
ぽかぽかと、日差しがあたたかい。体全体があたたまる。
気温は低い日だったけれど、そうは思えないくらい、体が直接あたためられているかのようだ。
うとうとと、眠くなってきそう。
またお客さんがやってきた。今度は、父と同じくらいの年齢の男の人だ。
「あれ?」
お客さんは、入口の看板を見た。
「今日は薬草だけです」
「そう。じゃあ、いいや」
「またのご来店、お待ちしています」
「どうも」
お客さんは帰っていった。
ぽかぽかと、日差しが気持ちいい。
「あったかいですね」
スライムさんが言った。
スライムさんは箱の中にいるのだ。
「気分はどう?」
「かなり、かうんたーです!」
スライムさんは言った。
スライムさんは、いつもお世話になっているカウンターの気分を味わいたくなったのだという。
それにはどうするか。
カウンターになるのが一番だ。
「カウンターの気分になれた?」
「はい! かなり!」
「どんな気分?」
「あたまのうえに、やくそうが、のってるきぶんです! こうして、のせているんだなあ、とおもいました!」
「なるほどね」
私はあくびをした。
「私、ちょっと眠くなってきた」
「どうしてですか!? えいぎょうちゅうですよ!?」
「あったかいから」
「えいむさん! たるんでますよ!」
「じゃあ、スライムさん出てきてよ」
「だめです! かうんたーなので!」
「そっか」
「はい!」
「……」
「……」
「……」
「……えいむさん? おきてますか?」
「起きてるよ」
「……」
「……えいむさん? おきてますか?」
「起きてるよ」
「……」
「……」
「……」
「……えいむさん? おきてますか?」
「……むにゃ」
「……」
「……」
「……」
「……」
私たちは、次のお客さんに肩をたたかれるまで、うとうとポカポカしていた。




