371 スライムさんとあいさつ
「えいむさん、こんにちは」
スライムさんがお店の入口までぴょこぴょこ来てくれた。
「こんにちは」
「いつまでも、こんにちはでは、いけないとおもいます!」
スライムさんが急に言った。
「おっと? どうしたの」
私はスライムさんの頭をなでた。
「えいむさん?」
「スライムさん、お怒りですか?」
「いいえ、もんだいていき、です!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「なにか、もっと、ぼくだけのあいさつが、したいです! ぼくだけの!」
ずずい、と近づいてくる。
「スライムさんだけのあいさつ?」
「はい! ほかのひとと、ちがうことを、いいたいです!」
「っていうと……。スラにちは、とか?」
「なんですかそれはおききしましょう」
スライムさんは真剣な顔で言った。
「ちょっと雑だったかもしれないけど」
私は反省した。
「……いいとおもいます!」
「本当?」
責められているわけではなかった?
「はい! すらにちは!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「いいですね! これこそが、ぼくの、もとめていたあいさつです!」
「ご満足いただけて、私もうれしいです」
「いえいえごていねいに。はっ」
スライムさんは、はっ、とした。
「えいむさんも、きまったあいさつが、ほしいですね?」
「え? 私? いるかなあ」
「いります! ……えいにちは、ですね!」
スライムさんは言った。
「エイにちは?」
「はい! ……うーん、ちょっとちがう、かもしれないですね……」
「ちがった?」
スライムさんは、あいさつにきびしい。
「えいばんは、でどうでしょう」
「エイばんは!」
「うーん」
「いまいちかな?」
「えいむさんはどうですか?」
「私は、自分だけのあいさつは、とくに求めてないけど」
「もとめてください!」
スライムさんは言った。
「ぼくだけのあいさつを、ぼくだけがするのは、なんだか、さみしいです!」
「わかった。スライムさんをひとりにはしないよ」
「えいむさん!」
「任せて。じゃあ……。エイよう?」
「!? あいさつですよ?」
「おはようと、エイムで、エイよう」
「えいむさんは、えいようだった……!?」
「私は、栄養だったのか……」
自分で言っていて気づかなかった。
「どうりで誰もが、私を見ると笑顔になって元気になると思った」
「えいむさんの、じここうていかんが、ばくはつしている!」
「だめかな」
「さいこうです!」
スライムさんは、むん、とふくらんだ。
「じゃあ、いったんでて、はいってきてください!」
「わかった」
私は店の外に出た。
入る。
「エイよう!」
「すらにちは!」
スライムさんが、カウンターの上に飛び乗った。
それから表情がくもる。
「どうしたの?」
決まった! といってくれるかと思ったのに。
「じゅうだいな、みすに、きづいてしまいました」
「なに?」
「じかんの、ずれです」
「あっ」
たしかに、おはようと、こんにちは。
ずれている。
「これは、おおきなもんだいです!」
「どうしたらいいかな」
「すらよう、ですかね……」
スライムさんは、なんだか不満そうだ。
「スラようは、いまいち?」
「えいようにくらべると、いまいちですね……」
スライムさんは体を軽く振った。
「ぼくの、まけです……」
「スライムさん。あいさつに、勝ち負けはないよ」
「えいむさん……」
「あいさつって、なんのためにすると思う?」
「わかりません」
「私もわからないけど、なんとなく、元気にならない?」
「!?
「だから、元気にあいさつをすればいいんだよ。それで、余裕があったら、こだわりのあいさつをするだけでいいと思う」
「はい! わかりました!」
「そう! 元気に言えばいいの!」
「はい!!」
「そう!!」
「はい!!!」
「そう!!!」
「おはいむ!」
「おはイム!」
『!?』
私たちは見合った。
私たちは、イム、が共通している。
そこを活かせば、自然と一緒になるのだった。
『おはいむ!』




