367 スライムさんと稲妻の杖
朝から雷がピカピカと光っていた。
このあたりは、寒い季節にあまり雷は見ない。
父が昔住んでいたところは、逆に雷がうるさいくらいだったという話を前に聞いたことがある。雪も、どっさり降るという。
白い景色にピカピカと、空が光るのだ。
でも今日は雪どころか、雨も降らなかった。
私はスライムさんのお店に向かって歩いていた。
そのとき。
激しい光が空と地面をつないだ。
私と、スライムさんのお店の間に雷が。
雷が………。
登った?
そういえば雷の音が聞こえない。
今日は光っている様子ばかり見ていたけれど、ドーン! という大きな音は聞いていなかった。
私は雷の登った場所をよく見た。
なにか地面に刺さっている。
杖だ。
くねくねと曲がった枝のような形の棒の先に、黄色い宝石のようなものがついている。
それがキラリと光ると、また雷が空にのぼった。
音はしない。
すごい迫力は感じるけれど、熱も感じない。
これはいったい。
「えいむさん」
「わっ、びっくりした」
すぐ近くにスライムさんがいた。
「これ、どうしたの?」
「これは、いなずまのつえ、です」
「稲妻の杖?」
「そうです。きょうは、そらが、くもっていたので、ぴかっと、ひかるものがみたくなりまして」
「もしかして、それで、あれを地面に刺したの?」
「そうです!」
スライムさんが、むん、とふくらむと、雷がのぼった。
「きれいでしょう!」
「きれいだけど……。ずっとこのままじゃ、危ないよね」
「ぼくもそうおもいはじめたところです」
スライムさんは淡々と言った。
「じゃあ、私が片づけようか?」
「あぶないですよ! かんでんします! びりびりです!」
「うーん。どうしたらいいかなあ。雷を通さない服とかないの?」
「あります! でも、いなずまのつえくらい、すごいかみなりをだすばあいは、ふせげるか、どうか」
「そうなんだ」
ピカピカ!
すごい迫力だ。
「たしかに、ちょっとした服だったら、雷が通ってきそうだね」
「たいへんです!」
「……でも、稲妻の杖って、ふだんはどうするの? 持ち運べないの?」
「もちはこべます」
「でも、ああやって置いておいたら雷が出てきちゃうんでしょう? 持ち運べないんじゃない?」
「そういわれると、そうですね」
スライムさんは、くにゃっ、と曲がった。
ピカピカ!
ピカピカ!
いつもは遠くでしか見えないものが、すぐ近くで見られる。
迫力があってこわかった気がしたのに、だんだん慣れてきた。
私は草原に座って、雷をながめた。
しばらくすると、誰かが近くに立っていた。
私たちはその人と、杖について話した。
その人も草原に座った。
そうして、だんだん人が増えていった。
10人くらいになっていたかもしれない。
ちょっと話していた人も、無言になってながめていた。
音もなくのぼっていく、ものすごい力。
私たちは言葉をかわさなくなってからも、なんとなく、感じていることがわかるような気がしていた。
私たちは、ピカピカ! ピカピカ! とのぼっていく雷を見ていた。
しばらくすると、空の雲が晴れてきた。
雲が晴れると雷は出なくなった。
集まってきた人たちは、だんだん帰っていった。
私たちは杖を回収して、魔力をさえぎる箱に入れた。
「これで、だいじょうぶです」
「よかったね」
「はい!」
私の目の奥には、ピカピカ! ピカピカ! と光る雷が残っていた。




