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365 スライムさんと最後のお願い

「がくっ」

 私がお店に入ると、スライムさんがカウンターの上で倒れた。


「こんにちは?」

「がくっ」

「えっと……。どうしたのスライムさん」

 私が言うと、そうです、とスライムさんが小声で言った。


「ぼくは、もう、だめです……」

「スライムさん?」

「さいごに、うらにわから、やくそうをもってきて、ください……」

「わかった」

「あっ! おくのほうの、つやのある、やつでおねがいします! さいごの、おねがいなので!」

「わかった」


 私は裏庭に行って、薬草畑を探した。

「うっ」

 びゅうっ! と強い風が吹く。

 今日の風は冷たい。


「これかな」

 たしかに奥の方には他の薬草よりも、葉っぱにつやがあって、しっかりとした薬草が生えていた。

 私はそれをつんで、土を洗ってお店にもどった。


「もってきたよ」

「ああ、それを、たべさせてください……」

 私はスライムさんの口元に持っていった。

 スライムさんが、もぐ、もぐ。


「ああ、みずみずしい……」

 私もかじってみた。

 たしかにみずみずしい。

「なんかおいしいね」

「はい……。あと、さいごのおねがいに、そこにちらかっているものを、あつめてください……。がくっ」

 

 入り口の近くには、細かい石のようなものがたくさん落ちていた。

「これは?」

「おきゃくさんが、じぶんのもっているものをおとして、ちょっとこわれたんですけど、そののこりです……。ばたばたしていて、みのがしました……」

「ふうん」

 私は、ほうきでさっさっ、と集めて、外に捨てていいと言われたので外に出した。


「ありがとうございます……、あとは、さいごに」

「ねえスライムさん」

「なんですか?」

「わたしも、最後にお茶、もらってもいい?」

「いいですよ……」

 スライムさんはのそのそと奥に行くと、お茶の用意をしてもどってきた。

 お茶が入ったコップが二つ。それを、頭の上にのせて慎重にやってくる。

 スライムさんの頭にめりこむ形でコップがのっていた。


「おっと」

 私はコップを受け取る。


「あぶないあぶない」

「ふふ。ぼくは、あんていしていました、けどね」

「熱々だ」

「きょうは、ひえますのでね」

「スライムさんも」

 私はスライムさんに飲ませながら、お茶を飲んだ。


「あったかくて、ほっとするね」

「はい! ……じゃあ、さいごに」

「なに?」

「おみせの、うらに」

「あ、ちょっと待って」

 私は手をあげた。


「どうしましたか?」

「それ、本当に最後?」

「ちがいます!」

「じゃあ、どうして最後っていうの?」

「さいごっていうと、なんでも、はなしをきいてもらえる。そうおそわったからです!」

 スライムさんは、むん、とふくらんだ。


「あるいは、いっしょうのおねがい!」

「私、最後って言われなくても聞くよ」

「!?」

「それより、最後って言われたのに、最後じゃないほうが嫌なんだけど」

「!!??」

「これで終わりって言われたのに、すぐ別のこと頼まれたら嫌でしょ?」

「そうですね! おわりだったのに! ってなります」

「だから、最後じゃないなら、最後っていわないで」

「わかりました! さいごじゃないです!」

「よし。じゃあ、一緒にやろうね」

「はい! はい?」

「掃除とか、させようとしてるでしょ?」

「はい! はい? さいごです! さいごじゃないです!」

「さ、こっちだね」

 私はスライムさんを連れてお店の裏に行った。


「なにをするの?」

「この、かべに、こびりついたよごれを、こすりおとします!」

「私はちょっとわからないなあ」

「こうです!」

 スライムさんは、硬いブラシをくわえて、ゴシゴシこすった。


「わあ、すごい!」

「ふごいふぇふぉう!」

「すごいすごい!」

 たちまちスライムさんは汚れをきれいにした。


「次は?」

「こっちです!」

 私たちはお店のまわりを掃除した。

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