361 スライムさんと猫耳
「いらっしゃいませ」
とお店から出てきたスライムさん。
その頭には。
「耳?」
黒い耳が生えていた。
いや、半円形の細い板のようなものが頭についていて、そこに、ふさふさの耳がついていた。
猫だろうか。
「いえす、ねこみみです」
「どうしたのこれ」
「ふふ。いいでしょう」
「いいね」
「どうぞ」
お店の中に入ると、同じようなものがもうひとつあった。
「どうぞ」
私は、スライムさんの言うままに、それを頭につけてみた。
「耳だ」
「いいですね!」
「へへ。でも、これは?」
「おほん」
スライムさんは、ぴこぴこと、私のまわりを一周した。
そして、きりっ!
「ぼくのことで、きになることは、ないですか?」
「えっと」
「そう! みみがないのに、きこえてる!」
きりっ!
「どうおもいますか!」
「たしかに、不思議だけど」
「でしょう! そこで、このみみです!」
ふさっ!
私も自分の猫耳をさわってみた。
「これで、きこえても、あんしんですね!」
「他にも気になることはあるけどね」
「またまた、えいむさんは、おもしろいですね!」
スライムさんは笑った。
「でも、私の耳って、どうなるのかな」
「といいますと?」
「頭の上と、横にあるけど」
私は、ふさふさと、ふにふにを、左右の手でさわった。
「えいむさん」
きりっ!
「はい」
「みみが、2つって、だれがきめましたか?」
「はっ!?」
言われてみればそうだ。
耳がなくても聞こえてるイムさんもいるんだから、耳が多いイムさんだっているのかもしれない。
「たしかにそうだね、4つでも、10あってもいいよね!」
「はい! おおすぎますけど!」
「そうにゃんね」
「おや? いまのはなんですか?」
「にゃにが?」
「!? えいむさん、かおに、ひげがはえてませんか……?」
私は前足で顔をさわってみた。
「よくわからにゃいけど」
「ちょっと、よく、みせてください!」
「……だめにゃん!」
私がぴゅーっとお店の外に走り出すと、スライムさんがついてきた。
「えいむさん、まってください!」
「嫌にゃ!」
「!? しっぽが、はえてませんか!」
「意味がわからにゃい!」
そうして走っていたら、走るのが速すぎたのかうっかり耳が落ちてしまった。
「おっと」
私は耳を拾った。
「えいむさん!」
「わっ」
スライムさんが、私の拾った耳の板にかみつくようにして、私から奪い取った。
「どうしたのスライムさん」
「これは、だめです! ぼくにつけてください!」
「いいけど。私はだめなの?」
「はい!」
よくわからないが、スライムさんは、耳をふたつつけて、4つになった。
「これでよし!」
「変なスライムさん」
「……はい!」
ちょっとなにか言いたそうなスライムさんだった。




