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351 スライムさんと喫茶店

「いらっしゃいませ……」

 お店に入ると、スライムさんが静かに言った。

 つかれているというわけではなさそうだ。

 得意げな顔にも見える。


「こんにちは……」

 私もつられて静かに言い、得意げな顔をしてみた。

「おせきへ、どうぞ……」

 スライムさんが示した先は、テーブル席だった。


 丸いテーブルと、椅子。

 テーブルは小さくて一人用のようだ。

 私は席についた。


「ごちゅうもんは……?」

「注文?」

 見ると、テーブルには小さな紙が置いてあった。


 きっさてん。

 コーヒー。

 サンドイッチ。

 シロノワール。


 これが注文できるものだろうか。

「えっと……。じゃあ、この、シロノワール?」

「あっ!」

 スライムさんが鋭く言って、私を見た。


「……シロノワー……」

「ああっ!」

 スライムさんが鋭く言う。


「……」

「……」

「……シロ」

「あああっ!」

 どうやら頼まないほうがいいらしい。


「サンドイッチ」

「かしこまりました……」

 スライムさんは静かに言って、奥に向かった。



「おまたせしました……」

 スライムさんが頭の上に、サンドイッチがのっているお皿をのせて、やってきた。

 ふるふるとふるえながらやってくるお皿を受け取って、テーブルに置く。

 その量!

 私たち家族全員分を頼んだくらいの量だった。

 パンの間に、はさまっているのは、卵だろうか。


「ごゆっくり……」

「えっと、ちょっと多いかな」

「たべきれなかったら、つつんで、おみやげにどうぞ……」

「そうなんだ。ありがとう」

 私はサンドイッチを食べてみた。


「おいしい」

 私が言うと、スライムさんの目が光った。

「ふふ……。ありがとうございます……」

「今日は喫茶店なの?」

「ええ……。いらっしゃいませ……」

 スライムさんは静かに言う。


「シロノワールってなに?」

「きっさてんには、あるらしいんですが……。いみが、わからなかったので……」

 スライムさんは得意げな顔をした。

「そっか。私もわからない」

「! ですよね!」

 ぴょん、ととんだ。


「うん。あ、でも、このサンドイッチのお金、持ってきてないよ。食い逃げしていい?」

「だめです! これは、じっけんなので、さーびすです!」

「無料なの?」

「はい! じっけんなので!」

「じゃあ、スライムさんも食べようよ」

 私は、スライムさんを抱えた。


 両手にサンドイッチを持って、スライムさんと、自分の口にはこんだ。

「おいしいね」

「はいもぐ!」

「もぐもぐ」

「もぐもぐ」

「もぐもぐ」

「ちょっと、おおいですね!」

「うん。でも?」

「つつみますので、おもちかえりください!」

「ありがとございます!」

 私たちは、ふふふ、と笑った。

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