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350 スライムさんと剣のなる木


「じゃじゃーん!」

 お店に入るとスライムさんがいきなり言った。


「おっと?」

「みてください!」

 私は店内を見た。


「いつもと同じような?」

「こっちです!」

 私はスライムさんに連れられてお店の裏に向かった。


「じゃじゃーん! けんの、なる、きです!」

「これは……?」

 植木鉢には棒が立てられていて、それにくるくるとツルが巻きついていた。

 そのツルが上までいって、おりてきて植木鉢からはみ出て、地面にたれた。

 そのたれたツルが、剣に巻きついている。


「これが、けんのなるき、です」

 スライムさんは言った。


「このきは、そだてると、やがて、けんがなるんです!」

「実ができるみたいに、っていうこと?」

「はい!」

 スライムさんは真剣な顔で言った。


「これさえあれば、もう、けんをつくるひつようは、ない……」

「なるほどね」

 私は剣の柄をちょっとさわった。

 剣がすべってツルから抜けそうになったので、手をはなす。


「木に、剣がなるなんてこと、あるのかな」

「ふふ。ごらんくださいよえいむさん」

 得意げなスライムさん。口調さえ変わるほどだった。


「ごらんのとおりですよ、えいむさん」

「たしかに……」

 スライムさんは信じているようだった。

 でもそんなことがあるだろうか。

 というより、ただ、剣を置いているだけのような……。


 私は決心して、剣を引きずるようにツルから抜いた。

 なんの抵抗もなく、ツルと剣との関係はなにもなさそうに思えた。

「スライムさん……」

「なんですか?」

 スライムさんは平気そうに言った。


「剣がなる木って……」

 言いかけて思った。

 いま剣とツルがつながっていない、ということと、この木で剣が育ったかどうかはなんの関係もない。

 剣ができてから、ツルを離れたということだってありえる。

 いいかげんなことを言うべきじゃない。


「あ、なんでもない」

「へんなえいむさん」

 スライムさんがふふ、と笑った。


「えっと、この木って……。これって、木っていうの?」

「いうんじゃないですか?」

 スライムさんは言った。


 木といえば、幹や枝があるものだという思いがある。

 しかし、ツルだけのこれを、なんと呼べばいいのかといわれたらわからない。

 植物、ではあいまいすぎる。木も含んでしまうだろう。


「……木だね」

「はい!」

 私はいろいろ受け入れられないものを感じながら続ける。


「えっと、この木はいくらだったの?」

「500ごーるどです!」

「この剣は、お店で売るならいくら?」

「はがねのつるぎなので、1500ごーるどです!」

 スライムさんは、ぴょん、ととんだ。


 おや?

「お得だね」

「はい! なんぼんも、けんが、とれたら、とってもおとくです!」

 スライムさんは言った。


 私の言っていることが、いろいろ、きちんと伝わっていない気がする。

 でも問題はない気がした。


「うん、ない」

「なにがないんですか?」

「ううん。じゃあ、今日は薬草をふたつ買おうかな」

「いらっしゃいませ!」

 私たちはお店の中にもどった。

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