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35 スライムさんとスライムコイン

「おかね、とはなんだとおもいますか?」



 よろず屋で、スライムさんがくれた、果物薬草、という薬草を食べていたらスライムさんが急に言った。


「えっと……。この薬草、おいしいね」

「そうでしょう! かじつの、ほうじゅんなかおりと、あまさ、すいぶんりょう、! すばらしいです!」

 スライムさんの言うとおり、薬草というよりは、薄い果実という感じで、口に入れるとみずみずしい果汁があふれてくる。


「もっと食べてもいい?」

「どうぞどうぞ!」

「うん。おいしい」

「ぼくもたべていいですか?」

「もちろん! だってスライムさんのだもん」

「ですよね!」

「それでなんだっけ」

 私が言ったら、スライムさんは口に入れた果実薬草を、お皿にもどした。


「こほん。……おかね、とはなんだとおもいますか?」

 スライムさんは言った。

「お金は、えっと……、ものと交換するためのもの?」

「そうです!」

「当たった」

「では、これをごらんください」


 下に降りたスライムさんが、カウンターの上にもどってきて硬貨をならべた。


 銀色の硬貨の表面には、笑っているスライムさんの図柄が描かれていた。


「これは?」

「すらいむこいんです!」

「スライムコイン」

「ちゅうもんして、つくってもらいました」

「へー、スライムさんと似てる」

「おかねとしてつかえますよ!」

「ええ?」


 私はスライムコインを手にとってみた。

 大きめの硬貨で、100ゴールド硬貨くらいある。


「もちろん、ぼくのおみせでだけでつかえる、おかねですよ!」

「なんだ、そうだよね」

「これをあげます。10ごーるどです!」

「いいの? どうも」

 私が言うと、コインがピカッと光った。


「ん?」

「えいむさんは、いつもはおかねをもらってくれないのに、これはもらってくれるんですね」

「割引券みたいなものでしょ?」

 いくらの価値があるかわからないけど、私はいちおうこのお店の常連でもあるし、そういう券がもらえたとしても不思議じゃない。

 薬草が一回タダ、みたいなことだ。


 それに、あんまりお金という気がしない。

 たぶん、記念にとっておくだろう。


「このおかねがすごいところを、おしえてあげましょう」

「すごいところ?」

「うらをみてください」

 私はコインを裏返した。

 

「ん?」

 コインの裏には、小さな字で……。


「これ、私の名前?」

 私のフルネームが書いてあった。

「そうです」

「どうして?」

「このこいんは、もちぬしのなまえが、かきこまれるしくみになっているんです!」

「ええ!」


 私はもう一度しっかりと見た。

 たしかに私の名前だ。

 そういえば、さっきもらったとき、光った気がする。


「つよくおすと、なまえが、うかびあがります」

「え? ……わっ」

 私の名前が空中にぼんやり浮かび上がった。


「もちぬしの、なまえのかくにんができますので、こうすれば、ぬすまれたとしても、だれのおかねかはっきりしてますから、ほかのひとがつかうことはできないのです!」

「すごい」

「ふっふっふ」

「裏面が名前でいっぱいになっちゃったらどうするの?」

「ふるいなまえはちいさくなって、あたらしいなまえがおおきくなります。とても、くふうしたまほうが、つかわれています」

「へえ」

 読めなくなったら、強く押せばいいわけだ。


「さらに、この、なまえをかくにんしないと、おかねがはらえないはこ、をつかうと、さらにあんぜんになるのです!」

 スライムさんは、カウンターの上に置いてあった箱を、ぽんぽん、とやった。


「だれのおかねなのか、しっかりわかるようになると、どうなるとおもいますか?」


 私は考えてみた。

 他人の名前が書いてあるお金なら、使おうと思っても難しいだろう。

 ということは。

「……どろぼうのしんぱいが、ない?」

「そのとおりです!」

 スライムさんは言った。


「すごいね」

「ゆくゆくは、せかいじゅうに、ひろめたいところです!」

「すごい!」

「えいむさんのおかねも、このおかねにかえませんか!」

「ちょっと興味ある」

「やりました!」

 スライムさんがぴょんぴょん、とびはねた。


「ぼくも、えいむさんにみとめられるなんて、いきつくところまで、きました……!」

「私は何者なの?」


 それはともかく、今回のスライムさんはちょっとすごいのではないだろうか。

 これをみんなが使うようになったら、本当に泥棒がなくなるかもしれない。

 それに、なにか他にもいいことがあるようにも思う。

 信用してもらえるというか……。


「これ、王様とか、そういう人に提案したほうがいいんじゃない?」

「ぼくもそうおもったのですが、ことわられました」

「どうして?」

「わかりません。おそらく、きとくけんえき、がからんでいるのでしょう」

「キトクケンエキ?」

「そうです。ふるくからあって、おかねがからむものには、それがかんけいしています。きとくけんえき。いってみてください」

「キトクケンエキ」

「そうです。きとくけんえき」

「キトクケンエキ」

「そうです。これでえいむさんも、きとくけんえき、をりかいしました」

「ふうん」

 ちょっとわからない。


「とにかく、だめだったんだね……。残念」

「はい」

「このお店の分は、つくるんでしょ?」

「はい! でも、どうぐやさんとか、これをどうにゅうしないかと、ていあんしたひとには、ことわられてしまいました」

「どうしてかな……」

 お店には、便利だと思うんだけど。


「10ごーるどこいんをつくるのに、1まんごーるどかかるっていったら」

「それだ!」

「え?」

「じゃあ、この、お金を安全に払うための箱は、いくらなの?」

「100まんごーるどかかります」

「それだ!!」

「ええ!?」

 スライムさんは、体を斜めにして悩んでいた。


「だって、お金を使うために、お金を全部使っちゃったら、お金がなくなっちゃうでしょ?」

「ほう……。いいこといいますね、えいむさん」

「そう?」


「お金がかからない方法って、ない?」

「ありませんね。このよのなかのものは、すべてに、おかねがかかるようにできているのです」

「そっか……」

 残念だ。


「でももったいないね。お金をつくるのに、お金がかからなければいいんだけどね。実際の形じゃなくて、仮に、あることにするとか」

「かりに、ですか?」

「うん。お金ごっこかな」

「そんなことができたらすごいですね」

 たしかに、そんな約束事でお金が払えるなら、犯罪なんてない世界かもしれない。

 それとも、そんな約束事を達成するための方法があるだろうか。

 魔法では難しいだろうし……。


「うーん」

「うーん」

 よくわからない。


 考えるのにつかれたらあまいものが欲しくなったので、果実薬草をおいしく食べた。

「おいしいですね!」

「そうだね!」

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