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348 スライムさんと風だまり

 よろず屋の入り口の手前で、青い、透きとおったものが左右にひょこひょこ動いていた。

 スライムさんだ。

 

「こんにちは」

「あ、いらっしゃいませ!」

 スライムさんは、振り向いた。


「でも、ここはまだおみせの、そと。いらっしゃいではない……?」

 スライムさんは、ちょっと体をすぼませた。


「いらっしゃいでも、いいんじゃない?」

「はい!」

「なにしてるの?」

「あ、ちょっと、かぜだまりが……」


 スライムさんは入り口の前を見た。

 私も見る。

 特になにもないような……。

 いや。

 びゅうびゅうと、音がする。


「風?」

「そうです!」

 私は思いついて、足元の草をちぎった。

 そしてスライムさんが言っていたあたりに落とすと、びゅっ、と飛んで消えた。


「いまのが……」

「かぜだまりです! きのうの、きょうふうが、のこっています!」

 スライムさんは、むん、とふくらんだ。


「風だまりって、そういうのだっけ?」

「はい!」

 スライムさんは断言した。


「じゃあもしかして、お店に入れないの?」

「はい! れないことはないですが、たいへんです!」

「返事のはいと、入れないが、一体化している!」

「ふふ。おきづきですか、えいむさん」

 スライムさんは、得意げな顔をした。


「では、やくそうでも」

 そう言ってお店の入り口に向かったスライムさんが、強風で転がっていった。

「スライムさーん!」



「あぶなかったね」

「はい」

 私はスライムさんを抱えてもどってきた。

「うっかり、はい、をくっつけたきもちよさで、かぜだまりを、わすれてしまいました」

 私はあらためて風だまりを見た。

 といっても風そのものはもちろん見えない。

 ただ、あるとわかっていると、草が、かなりそよいでいるのがわかる。気づいてみれば、なぜさっきはわからなかったのか、ふしぎになるくらいだ。


「さっきは、どうやって入ったの?」

「からだを、ひくくして、ずり、ずり、とはいりました!」

 私は、高さを変えて小石を投げてみた。

 すると高い位置の小石は吹っ飛んでいったけれど、低い位置の小石は勢いよく転がって、止まった。

 風の強さがちがうのだ。


「ということは」

「はい。うらぐちから、はいったほうが、よさそうです」

 私たちは顔を見合わせ、うなずいた。



「やくそうは、おいしいですね」

 私たちは中で薬草を食べていた。

「うまく頭を使って入れたね」

「ふふ。しゅうさいですから……」

「ふふ」

 私たちは、にやにやした。


「風だまりってどうなるの?」

「そのうちきえます」

「よかった」

「ふふ」

「ふふ」

 私たちは薬草を食べた。

 そのとき。


「うわああ!」

 お店の外で大きな声がして、私たちは声をひそめた。

 なにも聞こえない。

 そうっと見に行ったが、誰もいない。


「なんの声だろうね」

「そうですね……」

 すこし待っていたけれど、特に誰も姿を見せなかった。


「まあいっか」

「はい!」

 私たちは、のんびり薬草を食べた。

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