346 スライムさんとキンメダイ
「えいむさん、いちばんの、ひとだけが、たべられるさかなです!」
お店に入るとスライムさんがすぐ言った。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ!」
「それで、この魚が?」
私はカウンターのお皿にある、赤い魚を見た。
目が大きい。
丸みがあって立派な姿をしている。
「とってもおいしいさかな、だそうです!」
「へえ。だから一番の人がもらえるの?」
「そうです!」
「……金メダルってなかったっけ?」
それを手にすると、なんでも一番になれるものがあったような、なかったような。
「いやですねえ、これはきんめだるですよ!」
スライムさんは笑った。
「?? これも?」
「じゃあ、たべますか?」
スライムさんは言った。
「うん? うん。でも、どうやって食べるのかな」
私は、魚のしっぽを指先でさわった。
かたい。
生の魚を調理した経験はない。
母の後ろで調理を見ていた経験はある。
やってみろと言われたらできない。そういうものだ。
「にると、おいしいそうです!」
「煮るのか……。難しそう」
私は、鍋の中に寝かされた魚にだんだん味がしみていく様子を想像した。
「そしてこれが、にたものです」
スライムさんが近くの箱を開けると、茶色っぽく色づいた金メダルが現れた。
もう真ん中で半分に切られて、開いている。
「わっ、すごい! スライムさんがやったの?」
「ちがいます。この、なまのほうは、あとで、かいしゅうしてもらいます」
「どういうこと?」
「これは、えいむさんに、みせるようとして、かりたものです! たべるようは、こっちです!」
「それはわざわざ、お気遣いいただきまして」
「いいえいいえ」
私たちは、おたがいにぺこぺこした。
「じゃあ、食べてみる?」
「はい!」
骨を持つと、するるる、と外れたので、フォークの横で小さく切るようにした。
さして、スライムさんの口に運ぶ。
「!!」
スライムさんは目を丸くした。
「どう?」
「おいしいです! やくそうのつぎにおいしい!」
「そう?」
私も食べてみる。
「!」
しょっぱあまい味付けがしっかりしていて、身がしっかりしているようなのに、ほどける。
「しょっぱあまくておいしい」
「はい! しょっぱあまくておいしいです!」
私たちはみるみる食べてしまった。
「残りのほうは、骨がいっぱいあるね」
「そうですね……」
「スライムさん、ピンセットってある?」
「! あります」
私は慎重にピンセットで、骨を抜いていった。
「めいあんであり、たくみの、わざ!」
「ふふ」
すっかり抜いてしまうと、フォークでかんたんに食べることができた。
「おいしいね」
「はい!」
「見せる用の金メダルは、冷やしておいたほうがいいよね」
「はい! まほうせきで、ひえひえにします!」
「うん!」




