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345 スライムさんとドライアイ

「おっと」

 お店に入ると、スライムさんが鋭い目でにらむように私を見ていた。


「いらっしゃいませ!」

 と動かずに言う。

「こんにちは。……入ってもだいじょうぶ?」

「? どうぞ?」

「なんだかスライムさんににらまれてる気がして」

「ああ!」

 スライムさんは、ぴょん、とカウンターに乗った。


「これは、めが、いたいからです」

「目が痛いの?」

「はい」

 スライムさんは細い目で私を見る。

 本当に見えているか不安になるくらい細く開いている。


「目が。ちょっと見てもいい?」

「どうぞ!」

 私が近づくとスライムさんは、ぱちっ、と大きく開いた。

 すぐ細くなる。


「赤くなったりはしてないね。細いと平気なの?」

「はい」

「じゃあ、目がかわいてるとか?」

「めがかわく?」

「なんだか、ゴロゴロする?」

「します!」

「じゃあかわいてるかも。目をじっと開けたままものを見たりした?」

「しましたね! まじめに、おみせのいろいろなものを、じろじろみて、せいり、せいとんしました!」

 スライムさんが、むん、とすこしふくらんだので、ますます目が細く見える。


「えらいね」

「はい!」

「なら、しばらくしたら治ると思うけど……。かわいてるなら、目をぬらしてみたら治るかな」

「どうやってですか?」



「こうしよう」

 私はコップに水を入れてもどってきた。

 それを小さなスプーンですくう。

 スライムさんには天井を見るように横になってもらった。


「これで水をたらします。すると、目がぬれて、かんそうが治るのではないか」

「おお!」

「やってみてもいい?」

「はい!」

 私はスライムさんの目に、スプーンを近づけた。


「いくよ」

「はい!」

「よいしょ」

 私がスプーンをかたむけると、スライムさんは目を閉じた。

 スライムさんの目の近くにぽたぽた、と水滴が落ちる。

 すうっ、とスライムさんに吸収されていった。


「閉じちゃったね。じゃあもう一回」

「はい!」

 今度はなにも言わずにスプーンをかたむけてみたけれど、やはりスライムさんは目を閉じてしまった。

 ぽたぽたと水滴が落ちる。


「水が落ちてくるのは、なんとなくこわいかな?」

「はい!」

「じゃあ……」



「こうしよう」

 私は平たいお皿に水をはった。


「ここに、スライムさんが顔をつけて、目をぱちぱちすれば、こわくないんじゃないかな」

「なるほど!」

 そう言ってスライムさんは、ぺたり、とお皿に顔をつけた。

 すると水がすすす、とスライムさんに吸収されていった。


「めを、あける、まえに……?」

 スライムさんは、いま、困難に直面していた!


「じゃあ……」



「こうしよう」

 私は床に座って、近くにスプーンが入ったコップを置いた。

 そしてスライムさんを脚で抱きかかえるようにする。


「私がスライムさんの目を指で無理やり開いて、そこに水をたらしたらいいと思うんだけど……」

「はい!」

「こわいかな」

「はい! でも、えいむさんがやってくれるなら、だいじょうぶです!」

「ありがとう。じゃあ、できるだけ早く終わるように、ていねいに急ぐね!」

「はい!」

 私はスライムさんの右目の、まぶたにあたる部分にそれぞれ左手の人さし指と親指をそえた。

 右手でスプーンを持つ。


「いくよ」

「はい!」

 スプーンを近づけて、左手で目を大きく開く。

 かっ、と開いたスライムさんの目。

 そこに水を……。

 おや?


「えいむさん! まだですか!」

「あ、えっと」

 私はスプーンを置いて、右手の指で慎重に、目に刺さっているものをつまんで抜いた。


「……どう?」

「……いたくないです!」

 スライムさんは右目をぱちぱちさせた。


 私は続けて左目も同じように、抜いた。


「いたくなくなりました!」

 スライムさんは、ぴょん、と私の脚の中から飛び出して、お店の中をぴょこぴょこした。


「えいむさんは、めいいですね!」

「これが刺さってたんだけど」

 私は透明な、針のようなものを二本見せた。


「ああ、これは、とうめいなちょうちょからとれる、はりです! しょうひんの、せいりをしていたときに、はこがおちてきて、かおにあたりました!」

「それだ」

「でも、ちゃんとぜんぶあつめました!」

「えらいね。何本あったか、知ってるの?」

「むすうです!」

 スライムさんが、きりっ、とした。


「そっか。これからは気をつけようね」

「はい!」

「あ、傷が残ってるかな。傷薬はある?」

「ありますよ!」

 スライムさんが、透明な小びんを持ってきた。


「これをぬれば、いっぱつです!」

「目にも使えるの?」

「むしろ、めに、つかっていきましょう!」

「じゃあ、さっきみたいにスプーンでたらせばいいのかな」

「ふふ……。めを、あけろと……?」

 スライムさんは、にやりとした。


「そうだよねえ。……ん?」

 私は思いついた。


「これでいいんですか?」

 スライムさんは横になって、目を閉じていた。

「じゃあ、いくよ」

 私はスプーンで、目を閉じたスライムさんに薬をたらす。

 ぽとん、と落ちた水滴は、スライムさんの目に吸収されていった。


 ぱちっ、と目をひらく。

「なんだか、すっきりします!」

「やったね」

「えいむさんは、めいいですね!」

「それほどでもあるよ」

「しょうさんを、うけいれていく!」

「ふふ。もっとほめたまえ」

「えいむ! えいむ! えいむ!」


 私はしばらく、スライムさんのエイムコールを一身に受け続けた。

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