344 スライムさんとSURAIMU
「やくそうが、ない……」
スライムさんは、カウンターの中を見て絶望していた。
たしかにからっぽだった。
「裏庭に取りにいく?」
「いいですよ! でも、SURAIMUがなんていいますかね」
「えっ?」
私は、いま聞こえたスライムさんの声を頭の中でくりかえす。
スライム。
そう言っていた気がするけれど。
「えっと、スライムさんは薬草を取りにいくけど、行きたくないってこと?」
「SURAIMUがいっています」
「スライム」
「SURAIMUです!」
ちがうのはわかるけれど、どうちがうのかよくわからない。
「そのスライムは、スライムさんとはちがうの?」
「ちがいません!」
「どういうことなの?」
「ふふ。しりたいですか?」
「うん」
「それは……」
ごくり。
「よくわかりません」
「わから、ない……?」
「はい!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
「でも。ひとつわかっています。それは」
「それは……?」
「なんか、かっこいい、ということです!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「……なるほど。たしかに」
「でしょう!」
「うん。なんかかっこいい」
私は同意した。
「なんだかわからないけど、すごく大物になったような感じがする」
「でしょう! げんりは、わかりませんが!」
「言ってることは、サボりたいっていうことだけど、かっこいい気がする!」
「そうでしょう!」
「うん! じゃあ、私も」
コホン。
「私は食べないけどエイムはなんて言うかな?」
「EIMUです!」
「エイム?」
「EIMUです!」
「うーん」
むずかしい。
「さすが、スライムさんだね。私は、ちがうことしかわからないけど、スライムさんは、それ、を使いこなせるんだね」
「ふふ。ふふ! ふふ!!」
スライムさんがだんだん大きくなっていっているように見えた。
これが、スライム……。
うまく言えない。
「じゃあ、私はリトルエイムにしようかな」
「りとる、えいむ……?」
スライムさんはカウンターの上にのると、ちょっと身を乗り出すようにした。
「リトルエイムが言っているので、薬草を取りにいきます」
「あっ。ぼくも!」
スライムさんは、ぴこぴこ体をゆらした。
「こほん。りとるすらいむが、いいました」
「あ。それは私のだよ」
「SURAIMUと、りとるすらいむがいいました」
「よくばりさんだなあ」
「ふふ。えいむさん。じんせいとは、よくばったひとのところにだけ、いろいろなものが、あつまってくるんです!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「なるほどね」
私も、きりっ、とした。
「それは誰の言葉?」
「ぼくです!」
「またスライムさんか……」
名言スライムさんというところだろうか。
「スライムさんがいっぱい増えてくね」
「はい!」
スライムさんは、むん、とふくらんだ。
「ぼくは、たくさんいますよ!」
「しかし、私はひとりで十分さ。そう、たったひとりで、ね」
「!! えいむ、さん……!?」
「増えていくスライムさんと、たったひとりの私。いったい、どっちが強いかな?」
私はにやりとした。
「……えいむさん、やりますね! さすがは、ぼくの、らいばる!」
「ふふ。いまはどのスライムくんかな? まあ、誰でも同じだけれどね」
「! あまくみないことです!」
私たちは、突然のバトルが始まった。
それはそれは、壮絶なバトルだった。
しばらくバトルを楽しんだあとは、裏庭に行って薬草を食べた。




