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338 スライムさんと毒リンゴ

「しんせいひーん。しんせいひーん」

 スライムさんがお店の中でぴこぴこ歩いている。


「こんにちは。ごきげんだね」

「こんにちは!」

「新製品?」

「はい!」


 スライムさんは、ぴょん、とカウンターにのった。

 その下のほう、カウンターの中央にリンゴが置いてある。

 手前には、毒リンゴ、と書かれた札が置いてあった。

「これは……?」

「どくりんごです!」

「見まちがいではなかった……」

「えいむさんの、めは、たしかです!」

 スライムさんが、むんっ、と目を見開いた。


「本当に毒が入ってるわけじゃないんだよね?」

「ほんとうに、どくです!」

「ううむ」

 私は腕組みをした。


「これはどういうことでしょうか」

「なにか、むずかしいことでも?」

「このお店は、殺人をすすめるんですか?」

「……ふふ、えいむさん」

 スライムさんは意味深に笑った。


「きょうのぼくは、えいむさんの、そうしたはんのう。よそうしていました」

「なにっ!?」

「ふふ。えいむさんは、ぼくの、てのひらのうえです! てのひらは、ありませんがね!!」

 スライムさんは力強く言った。


「お店に入ったときから、私は、負けていた……?」

「えいむさん。こういうのは、かちまけじゃ、ないんですよ?」

 スライムさんがにやりとした。


「勝ってる人の言葉だ……!」

「ふふ。ふっふっふ!」

「じゃあ、殺人よろず屋ってこと……!?」

「ちがいます。そうです」

「!?」

「えいむさん。おみせのなかを、よくみてください」


 私はスライムさんの言葉どおり、お店を見わたした。

「いろんなものがあるよ。薬草とか、薬草とか、それと薬草とか」

「もっとありますよ!」

「あ、そうか」

 私は、はっとした。


「武器だ」

 剣やヤリなど、いろいろなものが飾ってある。

 そういうものだって、使い方によっては人を殺してしまう。

 だけど売っている。見慣れた光景だから気づかなかった。

 それだけだ。危険なことに変わりない。


「そういうことだよね?」

「はい!」

「だから、毒リンゴも売ってみる」

「はい!」

「私は、見慣れないものがあることを、受け入れられなかったんだね。これじゃ、エイムじゃなくて、受け入れられなイムだね……」

「ながい名前ですね!」

「うん」

 私はカウンターの中の毒リンゴを見た。


「ところでこれって、買ったらどうなるの?」

「どうとは?」

「ふつうのリンゴと、毒リンゴの見分け方がわからないんだけど。うっかり混ざったら危ないし。それに、誰かに食べさせる以外の、いい使い方とかも、よくわからないし……」

「あっ」

 スライムさんは言った。


「……」

「……」

「とりあえず、売るのはやめておこうか」

「はい!」

「でも、置いておくことは悪いとは言えない」

「そうですね!」

「毒リンゴは見せるだけ!」

「どくりんごは、みせるだけ!」


 それから3日後、毒リンゴはシワシワになった。

「しわしわだね」

「しわしわですね」

「毒があると期限が短いのかな」

「かもしれません!」

 くさるわけでもなく、しわしわで、ほそほそになった。変なにおいもしないので、そのまま、置いてある。

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