337 スライムさんとコップ
「こんにちは」
「いらっしゃいませ! おみずをどうぞ!」
スライムさんは、カウンターの上のコップを、ぷに、とさわった。
「これはこれは、ごていねいに。あれ? これ」
私はコップをよく見た。
コップは二重構造だ。
ふつうのコップの内側に、もうひとつコップが、底にはりつけてあるような形をしている。広い内側と、ごくせまい外側に、二重にコップがある。
だからその間に水を入れると、ちょっとの量でも、入る場所が薄いのでいっぱい入っているように見えるというわけだ。
「とりあえず、いただきます。ごくり」
「いかがですか?」
「水です。それで、これはなんなの?」
「ちょっとしか、のみものがなくても、いっぱいにみえるこっぷです!」
「なるほど。どういうときに使うの?」
「それを、かんがえてもらおうとおもいまして」
スライムさんは言った。
「ええー……、なにに使うかわからないまま、買ってしまった。そうですねスライムさん?」
「そのとおりです!」
「おさっしします」
「はい! ……?」
私はあらためてコップを見た。
外側に溝があるようなものだから……。
「あんまり飲み物がないとき、たくさんあるような気になるけれど……」
「そうですね!」
「でも、量は変わらないね……」
「そうですね……」
私たちは考えた。
気づいたら、ふたりで薬草を食べていた。
「はっ!」
「はっ!」
私たちは、はっとした。
「薬草より、このコップの利用法を考えないと」
「……えいむさん。いいんですよ。これは、ぼくが、かんがえなしで、しいれてしまったけっかです……。ぼくのかんがえが、たりなかった、だけなんです……」
「それはそう」
「!?」
「でも、それはそうとして、これはこれで、おもしろい商品だと思うんだよね。だから考えてみようよ」
「まえむき! まえいきですね!」
「前いき……? まえむき、をまえイムにするんじゃなくて、まエイき、というように、エイムのエイを真ん中に入れるという、新しい発想」
「!? おきづきに、なりましたか!?」
「おさっししました」
「さすが!」
そう。
中に入れるという、新しい発想でなにか新しいことができるかもしれない。
「そうだ。苦手な飲み物を飲むときに使えるよ」
「どういうことですか?」
「聞いたことあるんだけど、付き合いで、みんなでお酒を飲んだりするとき、飲みたくなくてもお酒をコップに注いでおかないといけないとか、あるみたい」
父は、そんなに好きではないが飲めないわけでないから、問題ないらしいけれど、まったく飲めない人はそのままムダにしてしまったり、無理して飲んだりしているらしい。
「だから、これならちょっとでいいから、ムダにならないし、雰囲気も悪くならないよ」
「! なるほど!」
スライムさんはぴょん、ととんだ。
「かんぺきですね!」
「嫌いなものとかもね」
「たんじゅんに! そうです!」
「ただ」
「ただ?」
「注ぎにくいけどね」
「……なにごとも、いいめんと、わるいめんと、なんでもないめんがあります!!」
「たしかに!」




