スライムさんと 唯一よろず屋経営スキルを持ってた僕、店長を辞めさせられたら代わりはいない~別のよろず屋でスローライフします~
「あれ?」
よろず屋、へいてん、という看板が置いてあった。
お休みではないのだろうか。
「あー、よろずやがへいてんですかー」
どこかから声がした。
お店の横を見ると、ひゅっ、と小さい影がひっこんだ。
「スライムさん?」
見に行ったけれど、誰もいない。
「あー、へいてん、させられて、いなくなっちゃったんですねー」
またどこかから聞こえた。
声がした方向を目指し、お店の壁ぞいに歩いていった。
ひゅっ、と影がひっこんだ。
「スライムさん?」
「いなくなってから、ああ、あのよろずやがあったら、よかったのになー、とおもっても、おそいんですよねー。もう、ほかのばしょで、あたらしいよろずやをひらいて、そこでだいにんき、なんですよねー」
「スライムさんだよね?」
「はーれむで、すろーらいふ、なんですよねー」
「いた」
しゃべることに夢中になっていたのか、入口の近くで目を閉じてしゃべっているスライムさんを見つけた。
ぐるっとまわってお店のまわりを、ほとんど一周していた。
「なにしてるの?」
「ふふ。もうおそい!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「なにが遅いの?」
「もう、よろずやは、へいてんですよ!」
「閉店するの?」
「なるほどね」
私たちは、お店の中でお茶を飲んだ。
「つまり、無理やりやめさせられて、でも、本当の評価を受けて、大成功した人になりたかったんだね?」
「はい! いわゆる、さまーです!」
「サマー?」
「ふっふっふ!」
「でも、本当は、やめさせられてないんだよね?」
「そうですね……」
スライムさんは、ちょっとくやしそうに言った。
「ふとくの、いたすところです……」
「ふん。スライム君。君はじゅうぶんやってくれた、だが、店の権利は私にある」
「えいむさん?」
「さっさと出ていきたまえ! ここは私の店だ!」
「おお!」
「行け!」
「ぐぬぬぬ! くやしいなあ! ぐぬぬ!」
スライムさんは、ぴゅんっ、と去っていった。
もどってきた。
「ぼくは、これから、またおみせをつくらないといけないんですか?」
「そうだね」
「めんどう、なんですが」
「だよね。それに、スライムさんは、最初から成功してるんじゃないの?」
「?」
「お客さんも来てるんでしょ? 私も来てるよ? この私も」
「たしかに、えいむさんもきてくれてますね。このえいむさんも」
「それじゃ不満?」
「ふまんじゃ、ないですね」
スライムさんは、きりっ、とした。
「ちょっと、ほしがりすぎたかも、しれません」
「でしょう?」
「これからは、あのえいむさんもくる、というかんばんを、おくことにします!」
「それはだめ」
「なぜ!?」




