スライムさんと様
「えいむさんは、おうさま、をそんけいしてますか?」
「王様?」
私は枝を置いた。
「いま、おうさまのはなし、してましたよね!?」
「この枝、火がつきやすいんだって、って言ったんだけど」
昨日の夜、風が強かったせいなのか、お店のまわりに枝が散らかっていた。
そのままはちょっと、見た目が悪いんじゃない? かたづけようよ、と言ったら、スライムさんは、そう、ですね……と言いながら遠い目をしていたので、一緒にかたづけを始めた。
「えだ、でしたか……」
「王様が気になるの?」
「はい! もし、そんけいしてないなら、どうして、さま、をつけるのかとおもったんです!」
「なるほどね。たしかに」
私は枝を見た。
「ちなみに、この枝はすぐ燃えるので、大きな薪を燃やす前に便利なんだよ」
「へえ! じゃあ、もってかえりますか?」
「持っていっていいなら」
「どうぞどうぞ!」
私は、持ってきた手提げに枝を、縦に詰めていった。
細くはないけれど空洞が多いのか、軽い。たくさん詰めてもほとんど負担に感じなかった。
「王様って、なんの話だっけ」
「ええと……、そんけいです!」
「そうそう。でも、王様って、王って呼ぶの、なんだか変じゃない?」
「たしかに! じゃあ、まおうさまといっしょですね!」
スライムさんは言った。
「私は、様ってつけないかなあ」
「まおう、だけですか?」
「うん」
「ぼくは、まおうさまってよびますよ!」
「そうなんだね。そんけいしてるんだ」
「それは、よくわかりませんけど」
「おや?」
私が言うと、スライムさんも、おや、と言った。
「おなじですね」
「同じだね」
「ぼくは、そんけいしてないっていうほどではないですけど、そんけいしてるっていうほどでもないです」
「私も。尊敬してなくもない。会ったこともないけど、大変なんだろうなあ、って」
「ぼくもです!」
スライムさんは、自分の頭に枝を2本さした。
「うむ」
「これが、スライムさんの想像する、魔王……?」
「おうさまである」
「王様だった」
「えいむよ。わしは、おうさまとよび、まおうさまとよぶ。じゃが、おぬしは、おうさまとよび、まおうとよぶ。これはさべつではないのか」
「たしかに」
私は考えた。
「でも、魔王様っていうと、人間の敵なのに、尊敬してるみたいになっちゃうかなって」
「じんるいの、てきに、みなされる。そういうことか」
「はい」
「じゃが、わしは、おうさまとよぶぞ」
「人間ができてますね」
「まおうができておる」
ふぉっふぉっふぉっ、とスライムさんは笑った。
王様じゃなくて実は魔王だったらしい。
「じゃあ、スライムさんと話してるときは、魔王さんって呼ぼうかな」
「! そうかね」
「スライムさんは?」
「じゃあ、おうさん、とよぼうかのう」
「王さん」
名前みたいだ。そんな名前の人がいるかわからないけど。
私は、スライムさんの頭の枝がだんだん中に入っていっているので抜きながら、スライムさんと一緒に枝を集めた。
「ひをつけて、みようかのう」
「火遊びはだめだよ」
「わしは、まおうじゃぞ? もやすまほうも、つかいほうだいじゃぞ?」
「そういえば魔王さんってあんまり話を聞かないけど、元気なの?」
「しらんのう」
「しらないんだね」
「うむ!」




