328 スライムさんとタメ口
「えいむさん、ためぐちって、しってますか?」
カウンターの上を、ふきそうじしたほうがいいかな? という話をしていたら、スライムさんが急に言った。
「そうじが嫌なの?」
「なかが、いいひとは、けいごをつかわず、はなすそうです!」
スライムさんは、目をそらしながら言った。
「敬語で話してるかな? そうか、私より、スライムさんが敬語だよね」
「はい! てんちょうの、たしなみです!」
スライムさんが、きりっ、とした。
「えいむさんも、すこしいいます!」
「そうかも。じゃあ、私たちは仲がいいから、ためぐちもやってみたいってこと?」
「はなしがはやいですね!」
「せっかくだから、入り直すね?」
私はお店の外に出て、また入った。
「ええと、こんにちは、スライム」
「えいむさん! いいかたが、つめたいですよ!」
「ためぐち、にしようって言ったでしょ?」
「あっ! うっかり!」
うっかりうっかり、とスライムさんは左右にゆれた。
「じゃあ、やり直しね」
「はい!」
「こんにちは、スライム」
「いらっしゃい、えいむ!」
「今日は薬草をもらおうかな」
「わかったぜ!」
スライムさんは、カウンターの中から薬草を持ってきた。
「じゃあお金」
「ありがとうだぜ!」
「じゃあ」
「どうもだぜ!」
私はいったんお店を出て、すぐ中にもどった。
「ねえスライムさん」
「うまくいきましたね!」
スライムさんの体の表面が、達成感できらりと光った。
「いまの、合ってる?」
私は言った。
「なにがですか?」
「ためぐち」
「そうですね……。えいむさんは、ちょっと、いつもと、かわりなかったかもしれませんね……」
「私が、まちがっていた……!?」
「もうちょっと、がんばりましょうね」
スライムさんは、にこやかに言った。
「……そっか。がんばるね」
「はい!」
「もう一回やる?」
「いいですよ!」
私は薬草をもどして、お金を受け取った。
お店に入り直す。
私は深呼吸をした。
「こんにちはだぜ! エイムだぜ!」
「!? いらっしゃいだぜ! すらいむだぜ!」
「はっはっは! 薬草がほしいぜ!」
「いえい! わかったぜ!」
カウンターにはもう、さっき置いたままの薬草がある。
「お金を払うだぜ! 足りるかぜ!?」
私はカウンターにお金を置いた。
「ぴったりだぜ! ありがとうございましたぜ!」
「いい薬草だな! また来るぜ!」
私はお店の外に出て、また入った。
「どうだった?」
「かんぺきです!」
「やったね!」
私は、ぐっ、と手を握った。
「これで、なかよしですね!」
「でも、ためぐちじゃなくても、仲はいいんだよね?」
「はい!」
「じゃあ、もうやらなくてもいいよね?」
「どうしてですか?」
「今度は、逆にしてみない? ていねいに」
「どんなかんじですか?」
「こんにちは、スライム様。ごきげんいかがですか?」
「これはごていねいに、えいむさま。ごきげんいいでございます」
「今日はいいお天気ですね」
「そうですね。ふふふ」
「ふふふ」
ていねいだと、なんとなくニコニコしてしまうので、ふしぎだった。




