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323 スライムさんとサイコロ

 コロン。

「6」

 コロン。

「3」

 コロン。

「3」


 お店の中。

 スライムさんは、カウンターの上で熱心にサイコロを転がしていた。

 一度出た目を見ると、くわえて、また口から離す。そういうことをくりかえしていた。


「こんにちは、スライムさん」

「ふぼ?」

 サイコロをくわえようとした形で、スライムさんが止まった。


「えいうあん、おんいいあ!」

「スライムさん、ふつうにしゃべれるよ!」

 スライムさんは、まだくわえていなかった。

「はっ! たしかに!」

 スライムさんは、急いでサイコロを口に入れた。

 青くて透けている体にサイコロが浮かんでいる。


「なんで食べたの!?」

「いらっしゃいませ。これをきちんといわなければ、ね」

 スライムさんが、にやりとした。

 ……なぜ食べたのか。


「それはそれは、ごていねいに」

「どうも!」

「それで、サイコロ?」

 私が言うと、スライムさんの中でサイコロが、ゆっっっくり回転した。


「はい!」

「あ、わかった。サイコロで、なにかゲームをするんでしょう?」

 私が名推理を言うと、スライムさんは、きょとんとした。


「おや? ちがった?」

「さいころで、げーむ?」

「うん」

「どういうことですか?」

「どういうことだろう?」

 私たちは、ふしぎそうに見合った。


「さいころを、ころがすのが、げーむでは?」

 スライムさんは言った。


「さいころは、ころがったら、1から6まで、なにがでるかわかりません。そのどきどきが、おもしろいのでは?」

「……」

 私は、そっとスライムさんの頭をなでた。


「えいむさん?」

「私は、よごれてしまったよ……」

「えいむさん!?」

「サイコロは、ゲームに使う道具だと思っていたよ。でもちがったんだね。サイコロは、それ自体がゲームだった……」

「えいむさん!」

 スライムさんは、体をぷるぷる振った。


「いいんですよ! げーむなんて、ひとそれぞれです!」

「人、それぞれ……」

「あるいは、まものそれぞれです!」

「魔物、それぞれ……」

「はい!」

「……スライムさん。私も、素直にサイコロ振れるかな?」

「できます!」

 スライムさんが、コロン、と口からカウンターにサイコロを出した。


 持ってみる。ベトベトしてないどころか、ぬれてもいない。

 振ってみる。


「3だ」

「はい!」

「じゃあ、もう一回」

「どうぞ! 2です!」


 私はサイコロを振った。

 2だ。

「……あれ?」

「どうかしましたか?」

「いや……。もう一回振るね」

「はい! 5です!」


 私はサイコロを振った。

 5だ。

「ん?」

「どうかしましたか?」

「スライムさん、サイコロ、なにが出るかわかるの?」

「ええ」

 スライムさんは当然のように言った。


「振るよ」

「1です」

 1。


「……すごいんじゃない!?」

「これはすごくないです。だれでもできます」

「そんなことないよ!」

「えいむさんも、できますよ?」

「そんなばかな……。2」


 サイコロを振ってみる。

 2。


「ほら」

「そんな……。2」


 2だ。


「ほら!」

「え、これは、ふつうのサイコロだよね……?」

 特別重くもないし、魔法石などは入っていないように見える。


「さいころは、よくみていると、わかるようになります!」

「私は?」

「えいむさんは……。さいのうです!」

「……なんかこわい」

「え?」

「こわい!」

 私はサイコロから離れた。


「こわくないですよ!」

 スライムさんは、すぽっ、と口にくわえると、私を追いかけてくる。


「やだ!」

 私はお店の外に逃げ出した。


「まってくださーい!」

「待たなーい!」

「さいころが、ともだちになりたいって、いってますよー!」

「スライムさんで、間に合ってまーす!」

 私たちは、お店の外でしばらく追いかけっこをしていた。

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