322 スライムさんとしごと
「じゃあ、やろうか」
今日はスライムさんと、ちょっとお店の片づけをすることになっていた。
もうすぐたくさん荷物が来るらしく、場所をあけないといけないという。
「やりますか?」
スライムさんは嫌そうに言った。
「やらないの?」
「きょう、しぬかもしれませんし。だったら、やらなくても……」
「死なないかもしれないから、やろうね」
「えいむさんは、じごくにおちるかも、しれませんよ!?」
「なんで私は天国に行けないの!?」
「えいむさんは、じごくの、ふんいきをよくしてくれそうです」
スライムさんは、むん、とふくらんだ。
「なんかどこかで言われたことがあるような、ないような」
「そんなことが……!? やっぱり、えいむさんは、ただものじゃないですね!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
「でも、どうしてそんなことが気になったの?」
「てんごくにいったら、どうなるのかなあ、とおもいまして」
「スライムさんは天国に行く気だ!」
「ふふ」
スライムさんは、悪そうに笑った。
地獄の顔をしている。
しかしすぐ、顔がくもった。
「でも、てんごくも、あんまりたのしくないかもしれません」
「どうして? 平和に暮らすんじゃない?」
「そこでおわりですか?」
スライムさんは、うたがうように言った。
「ただ、にこにこしてるだけですか?」
「おいしいものを食べたりも、するかな。楽しい遊びとか」
「はいそれです、びしっ!」
スライムさんは、びしっ、と言った。
「そんなことをしたら、それを、かんりするひとが、いりますよね! おもちゃとか、やくそうとか!」
「まあ、そうかもね」
「わかりますか!? ろうどうですよ!」
スライムさんが、ぶるっ、とふるえた。
「でも、天国の労働なら、やりたい人がやるだけじゃない? ほら、そういうのを、やりたい人だっているでしょ?」
私が言うと、スライムさんは、ちっちっちっ、と言った。
「やりたいひとが、いないときでも、やってもらいたいひとは、いる。そういうときは、どうしますか!?」
「え? 誰かが代わりにやるとか」
「びしっ!」
スライムさんはまた、びしっ、と言った。
「ほら……。やりたくないひとが、やるきっかけが、でてきましたよ……」
「でも、ちょっとくらいの、手伝いとか」
「そのちょっとが、いのちとりですよ! しんでいるのに、いのちとりとは、どういうことですか!?」
スライムさんは、ぴょんぴょん、とんだ。
「やりたいひとが、やっていたものが、いつしか、やりたくないひとも、やることになるんです!」
「たしかに」
「そうやって、ろうどうは、ぎむに、なっていくんです! じごくです! てんごくは、なかった!」
スライムさんは、ぶるっ、とふるえた。
「えらいひとも、いっています! しご、とは、しごとである、と!」
スライムさんは、力強く私を見た。
「どんな人?」
「それはいいでしょう」
スライムさんは目をそらした。
「ぼくがいいたいのは、つまり、しんでも、しごとをするのなら、いま、しごとをするのは、どうなのか。そういうことです」
「今日は、片づけするんでしょ?」
「つまり、そういう、じごくです!」
スライムさんは、力強く言った。
「今日なら私も手伝うけど、明日はお母さんに頼まれた用事があるから無理だよ。ひとりでできる?」
「しかたない、きょう、やりましょう!」
スライムさんは力強く言った。




