318 スライムさんとポーション
「あれ、めずらしい」
カウンターの端のところに、小さいビンがならんでいた。
透明なビンで、透明な液体だ。
「ぽーしょんです……」
スライムさんが、力なく言った。
「? これって、薬草みたいなものだっけ?」
「やくそうと、ぽーしょんごときを、いっしょにしないでください!」
スライムさんが、キッ、と私を見た。
「ごとき」
「のんだり、ぬったりして、きずをなおしたり、するかもしれないていどの、たかが、ぽーしょんです!」
スライムさんが荒ぶっている。
「そうなんだ。これっていくら?」
「これは、ひとつ1まんゴールドです!」
「えっ」
私は、持っていたビンをカウンターに置いた。
「お高いね。薬草と似たようなものなんでしょ?」
「はい! ほんとうは、10ごーるどくらいです!」
「だったら、高すぎない?」
「だからこそです!」
「うん?」
私は首をかしげた。
「おなじくらいの、おねだんなら、ぽーしょんを、かってしまうかもしれません!」
スライムさんは言った。
「だめなの?」
「だめです! やくそう、いず、なんばーわん!」
スライムさんは、ちょっと縦にのびた。
「ぽーしょんなんて、ほろびてしまえばいい!」
「過激だね」
「ひつようなら、ぼくは、かげきになります!」
「そんなにポーションはダメなの?」
「やくそうの、にせものなのに、おおきなかおをして!」
スライムさんがぷるぷる震えた。
「でも、お店には置くの?」
「おきます! そして、おまえなんて、うれないんだと、わからせてやります!」
へへへ、とスライムさんは悪い顔をした。
「おまえなんて、うれないんだぞ!」
スライムさんは、ポーションに言った。
「えいむさん、たいへんです」
翌日、よろず屋に行くと、スライムさんが青い顔をしていた。いつも青いけれど。
「どうしたの?」
「ぽーしょんが、うれました……」
スライムさんは、がくぜんとしていた。
「え? だって、1000倍くらいの値段にしてたよね?」
「はい……」
「じゃあ、どうして」
「ほかで、うってなかったそうです……」
「そんなにポーションってめずらしいの?」
「いえ、ぼくが、かえそうなぽーしょんは、だいたいかったので……」
「いくつくらい?」
「1000か、2000か、もっとか……」
「ええ!?」
私は思わず奥を見た。
そんなに大量のポーションが?
「まだ、きてない、しなものもあります」
「そうなんだ」
「みんな、ぽーしょんのことを、わすれてくれればいいのに……」
翌日、スライムさんは、もっとがっかりしていた。
「ぽーしょんが、ぽーしょんが……」
また売れたらしい。
よろず屋が、この近辺で唯一ポーションを扱っているという話だった。
「どうして……」
「スライムさん。ポーションにも、ファンがいるんじゃない?」
「そんなわけないです」
スライムさんはすぐ言った。
「スライムさんが薬草を好きなように、ポーション好きがいるんだよ」
「1まん、ごーるど、なのにですか?」
「そう。スライムさんだって、薬草がなくなったら、それくらい出すでしょ?」
「1おくでも、1なゆたでも、だします!」
「うん」
なゆた?
「あと、おみせのうらにも、あります!」
「うん。ポーションがない人も、無理してお金を払って買ってるのかもしれないよ? スライムさんが、全部買っちゃったから」
「そう、ですか……」
「スライムさんは、そうやって大もうけしたいわけじゃないでしょ?」
「はい! なんなら、いまから、すべてのぽーしょんのびんを、わって、わって、わりまくりたいです!」
「過激だ」
「でも、わかりました。あしたからは、10ごーるどで、うります!」
「今日からね」
「……はい」
スライムさんが、目をそらした。
「私も手伝うから」
「なら、きょうからやります!」
むん、とスライムさんは、ふくらんだ。
それからしばらく、よろず屋に行けばかならずポーションがある、といううわさになっていた。




