316 スライムさんと黒い檻
「これは」
お店の裏の、薬草が生えているところでも見てみようかと歩いていったら、裏になにか置いてある。
檻だ。
金属の格子が六面にあり、ひとつに出入り口となる可動部分があった。
大きさは私の背よりも低い。
「みてしまいましたね……」
背後にスライムさんがいた。
「あ、これなに?」
「おりです……」
スライムさんが重々しく言った。
「動物でも飼うの?」
「こんなものにいれられる、どうぶつのきもちになったことがありますか!?」
「ないよ」
「ですよね!」
スライムさんは、檻の横にぴょこぴょこ進んでさわると、カシャン、と音がした。
きい、と可動部分が開いた。
「ちょっと、はいるので、みててくださいね」
「入るの? うわっ」
スライムさんが中に入ると、スライムさんが真っ黒になった。
「スライムさん!」
「はい!」
スライムさんが、ぴょん、と出てくる。
するといつもの、透き通った青色をしていた。
「スライムさん?」
「はい?」
スライムさんが檻に入る。
また真っ黒になった。
「スライムさん!」
「はい!」
スライムさんが、ぴょん、と出てくる。
また透き通った青に。
「いったい、これは……」
私は、裏手に置いてあった木箱を持ってきて、座った。
落ち着いた。
「どういうことなの?」
私が言うと、スライムさんがやってきて、ぽむ、と私をさわった。
「おどろきましたね?」
「うん」
「えいむさんも、てをいれてみてください」
私はスライムさんに言われるままに、手を檻に入れてみた。
「おっ」
檻に入れた部分だけが黒くなる。
出すと元通り。
「中に入れると黒くなるよ」
「そうなんです!」
スライムさんは、すっ、と入って、すっ、と出てきた。
「おおー」
「あおと、くろを、かんたんにいったりきたり、できます!」
スライムさんが半分だけ黒になって言った。
「すごいね!」
「はい! だから、おりのなかで、まっくろになりたいひとに、おすすめです!」
スライムさんは言った。
「檻の中で真っ黒になりたい人……?」
「いませんかね?」
スライムさんが、すこし不安そうに言った。
どういう人だろう。
「いるかもしれないけど」
「けど?」
「世界のどこかにいるかもしれないけど」
「けど?」
スライムさんがちょっと私に近づいて言った。
「会えるかどうかは、わからないよね」
「! たしかに!」
スライムさんは、ぷるん、とふるえた。
「あと、小さいから人が入るにはせまいよね」
「! きほんてきな、もんだい!」
「あ、でも、正体を知られたくない人とか?」
私は思いついて、言ってみた。
「ひみつにしたいひとが、なかに、はいる?」
「見られてもだいじょうぶだよ」
「そのまま、みんなのまえにでていく……?」
「そんなことが……?」
「あります……?」
私たちは考えた。
「ないね」
「はい!」
「じゃあ、めずらしい品物を入れておこうか」
「どういうことですか?」
「泥棒とか、真っ黒だったら、うっかり見逃しちゃうんじゃない?」
「なるほど! そうします!」
スライムさんが薬草を入れた。
檻の中に、真っ黒な草が残った。
「なんかあやしげだね」
「そうですね!」
「逆に、めずらしい品物に見えるね」
「そうですね!」
薬草はやめておこう、と私は檻から出した薬草を、ちぎってスライムさんと食べた。




