314 エイムとテントウムシ
「そういえば今朝、ちょっと変わったことがあったんだよ」
私は言った。
カウンターで、ちょっと体をねじって遊んでいたスライムさんは、ねじりをほどいた。
「ぼくのうごきより、かわってましたか?」
「いい勝負だね」
「ききましょう!」
スライムさんは、むん、とふくらんだ。
「実は」
朝起きると、枕に黒い小さなものがあった。
最初はゴミかと思ったけれど、みょうにきれいな丸で、なんだろうとさわってみた。するとちょっと、かたかった。
つまんでみると、それはテントウムシだったのだ。
「まくらで、ねてたんですね!」
スライムさんは言った。
「たしかに」
枕で寝ていただけなんだから、なにがおかしいというのか。
「……いや、変じゃない?」
「てんとうむしが、まくらでねてたら、へんですか? えいむさんは、まくらでねているというのに」
「スライムさんは枕で寝てるの?」
「ぼくは、まくらをつかいません。まくら、いらないは、なので!」
「枕いらない派」
新しい派閥をつくってしまったかもしれない。
「派閥は、いい面もあれば悪い面もあるよね」
「なんのはなしですか?」
「じゃあ、枕はいいとしようか」
「しましょう!」
「でも、テントウムシって、寒い時期に見かけたかなあ、と思って」
あたたかい時期に現れる印象だ。
「とうみんじゃないですか?」
「冬眠? テントウムシって冬眠するの?」
「ぎゃくに、てんとうむしが、とうみんをしないとおもうのは、しつれいですよ!」
スライムさんは、びしっ、と言った。
「たしかに、そうかもしれない」
「てんとうむしだって、てんとうむしじゃなくたって、とうみんするんです!」
「そうかもしれない」
「えいむさんだって、とうみんします!」
「私も冬眠する?」
「はい! まくらで!」
もしかして、私は毎日冬眠していた……?
「他の時期も枕で寝てるよ」
「じゃあ、ぜんみんです!」
「全眠か……。ということは、テントウムシが枕で冬眠していたとしても……」
「なにも、おかしくないんです!」
「平和な日常だったんだね」
「はい!」
私とスライムさんは、平和な日常と、薬草をかみしめた。




