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313 スライムさんと一文字

 なにか聞こえる。


 だんだん音が、いや声が近づいてくる。

 ……さーん!


「えいむさーん!」

 スライムさんだ。


 よろず屋の前の道を、ぴょこぴょこぴょこ! とやってくる。


 私の前で止まると、はあ、はあ、と息をついていた。


「まあ、いきはきれないんですけど」

 スライムさんは言った。

「スライムさん? どうしたの」

「いいことを、かんがえたので、いそいできました!」

「いいこと?」

「きょうは、いちもじで、はなそうとおもうんです!」

 スライムさんは、きりっ、として言った。


「一文字?」

「はい。たとえば、あいさつは……。い! です」

「い? いらっしゃいませ、っていうこと?」

「さっしが、いいですね!」

 スライムさんは、ちょこちょこと左右に動いた。


「じゃあ……。こ」

 私も言ってみた。

「こんにちは! ですね?」

 意外と通じる。

「察しがいいね」

 私がにやりとすると、スライムさんも、にやりとした。


「ど!」

 スライムさんは、お店に突撃していった。

 どうぞ、ということだろうか。



「こ」

「い!」

 スライムさんは、カウンターの上にとびのった。


 私はカウンターの中をちらっと見る。

「や」

「は!」

 スライムさんは、カウンターの横にある、薬草ののったお皿を押してきた。

 準備されていた。


「よ」

「ふ!」

 スライムさんは笑っている。


「こ」

 私は硬貨を置いた。

「ち!」

 スライムさんが言うとおり、おつりはない。


「あ!」

 スライムさんは言った。

「ど」

 私は言って、薬草を手提げに入れ、お店を出た。


 出てから立ち止まって振り返ると、スライムさんが出てきた。


「いけましたね!」

 ちょっと弾むように、勢いがよかった。


「もうふつうにしゃべっていいの?」

「はい! あれは、おみせのなかだけのやつ、なので!」

 スライムさんはお店をちらっと見た。


「どうして一文字で話すことにしたの?」

「こうりつが、いいとおもいまして!」

「なるほど。スライムさんは効率を意識するんだね」

「えいむさんは、しませんか?」

「することもあるけど……。こういう話はできなくなっちゃうでしょ?」

「え?」

「お店の中は、一文字なんでしょ?」

 私が言うと、スライムさんは笑った。


「おみせの、そとに、でればいいじゃないですか!」

「……それは、効率がいいの?」

「……?」

 スライムさんは、ちょっと傾いた。


 私もちょっと傾いた。


「……じゃあ、話がわからなくなったり、詳しい話をしたくなったら、一文字は終わりにすればいいか」

「! じゅうなんな、はっそうです!」

 スライムさんは、ぴょん、ととんだ。


「わかいって、いいですね……」

「スライムさんは若くないの?」

「そうじゃのう」

 スライム老師は言った。


「まだまだ師匠もわかいですよ」

「ほっほっほ、うれしいことをいってくれるのう。どれ、きょうは、やくそうをひとつ、おまけにつけてやろうかのう」

「いいんですか師匠」

「ほっほっほ」


 私は師匠と一緒にお店にもどった。

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