312 スライムさんと裏金
「いらっしゃいませ!」
「うわっ」
お店に入ったらスライムさんが背後に!
どうやら、、入り口のすぐ横に隠れていたようだった。
「おどろきましたか!?」
「……全然」
私は平然と言ってみた。
「えっ!? うわっ、ていってたのに!?」
「言ってたっけ?」
「へいきいむさん!?」
「もしくは、強がりイムかもしれない」
「なるほど!?」
スライムさんは、おどろいていた。
「あれ?」
私はそんなスライムさんをよく見た。
青い、透き通った体のなかに、なにかある。
硬貨だろうか。緑っぽい。
浮かんでいるみたいに見える。
「それなに?」
「ふっふっふ。つよがりいむ、さんも、きになってしまいましたね?」
スライムさんは、カウンターの上にとんだ。
そして口を開けると、体の中から硬貨がすーっ、と流れるように出てきて、口の端で止まった。
私はそれをつまんで、カウンターに置いた。体の外で見ると、金色だった。
「1111ゴールドこうかです!」
スライムさんは言った。
「なにそれ?」
「きねんこうかです! 1をきねんに、なにか、つくったらしいです!」
「へえ。1を記念に」
「はい!」
硬貨は、1111、と書いてある面と、お城の絵が刻まれている面があった。
「国ができて、1111年経った、とかかなあ?」
「ありえますね!」
スライムさんは、深く納得していた。
そして私がなにげなく、1111と書いてある面を置いたときだった。
「えいむさん! うらがねになってますよ!」
スライムさんが鋭く言った。
「裏金?」
「おしろのほうが、おもてです!」
「ああ、うん」
私はひっくり返して、お城の面にした。
スライムさんが、あぶなかった、と息をついていた。
「裏はだめなの?」
「ぼくも、さいきんしったんですが、うらがねは、はんざいらしいです!」
「犯罪?」
私は硬貨をちらっと見た。
なんだか、さっきまでより、こわいものに見えてくる。
「おかねを、うらむきにおいたら、うらがねといいます! このせいで、えらいひとも、つかまったり、するらしいです!」
「そうなんだ……?」
私は首をかしげた。
「でも、私はいままで裏金をやったことあると思うけどなあ?」
「それが、うらがねのとくちょうでもあります!」
スライムさんは言った。
「うらがねは、いっしょにいたひとたちが、しらないといえば、ごまかせるんです!」
「なるほど?
」
たしかに、私が裏金をしても、スライムさんはわざわざ言わないだろう。
お客さんが来なくなってしまうだけだ。
そうじゃなくても、わざわざ言うのも面倒というか、無視したくなる。だから私は知らないし、聞いたこともなかったのだろうか。
「裏金は、秘密と密接な関係が……?」
「そうです!」
「じゃあ、捕まった人は、嫌われてたのかな?」
「かもしれません! もしくは、そのひとくらい、えらくなりたいひとが、じゃまだったのかもしれません!」
「なるほど。えらい人たちは、いろいろ大変だって言うもんね」
「はい! いろいろたいへんです!」
「じゃあ、もしかしたら、やってもいないのに、裏金だって言われている可能性も?」
「! ありますね!」
「もしかしたら、もっと裏金をやっているのに、ごまかしてた可能性も?」
「! ありますね!」
「裏金ってむずかしいね」
「そうですね!」
「私たちにできるのは……。表金を使うことだけだね」
「そのとおりです!」
私はふと、思った。
「でも、裏を見たいときはどうしたらいいのかな」
いちいち犯罪になってしまうのでは、困るぞ。
「もってるときは、たぶん、だいじょうぶです!」
スライムさんは言った。
「じゃあ……。ずっと持ってればいいんじゃない?」
「どういうことですか?」
「お金を払うとき、カウンターに置いたら、裏金になっちゃうかもしれない。だから、私は手に持ってて、相手にわたすか、手の上から持っていってもらうようにすれば……」
「! うらがねになりません!」
スライムさんは、ぴーん! とのびた。
「裏金にならないようにするには」
「ちゃんともっていればいい!」
「解決!」
私は裏金問題を解決したのだった。




