307 スライムさんと祝日
こんな日が来るんじゃないかと思っていた。
ついに来てしまった。
スライムさんは草原に倒れていた。風に草がゆれて、その中に沈むように目を閉じているスライムさんを飾っているみたいだった。
「スライムさん……」
「……」
「どうして、こんなことに……」
「……すやあ」
お店の入り口は閉まっていて、スライムさんはすっかりお昼寝だ。
もう仕事をする意欲をなくしてしまったのだろうか……。
「ちがいますよ」
スライムさんは目を開けていた。
「起きてたの?」
「きょうは、しゅくじつです!」
「しゅくじつ」
「おいわいのひです!」
「ああ、祝日。なんの祝日?」
「すらいむのひです!」
スライムさんは堂々と言った。
「スライムの日」
「しってますか? しゅくじつは、おやすみになると」
「そうだね」
国の記念の日など、その日は働かないでお祝いをする、といった風習はある。
「でも、スライムの日って?」
「ぼくがきめました! こうすれば、やすみにできます!」
スライムさんはゆっくり起き上がった。
「わかりますか? こうすれば、いつでも、すきなときに、やすめます!」
「わかるけど……。いいの?」
「なにがですか?」
「祝日を勝手に決めて」
私とスライムさんは、すこしだまった。
「えいむさん。ぎゃくにききます」
「逆に」
「しゅくじつを、ぼくがきめたらいけないですか?」
スライムさんは言った。
澄んだ目をしていた。
「……だめじゃない?」
「!!??」
「みんなで決めないと」
「じゃあききますけどー、えいむさんはー、しゅくじつをきめたことってー、あるんですかー?」
スライムさんは、ふてくされたように言った。
「ない、ね……」
言われてみると、私が祝日を決めることに関わった記憶はない。
父は母がそういったことに関わった記憶もない。
「誰か知ってる人が関わったっていうのも聞かないね」
町長さんを決める選挙は聞くけれど。
「わかりましたか? しゅくじつは、いちぶの、けんりょくしゃが、かってにきめているんです!」
「たしかに」
「ぼくは、その、おうぼうに! たちあがったんですよ!」
スライムさんの目は燃えていた。
「なるほど。スライムさんは、ただ休みたいだけじゃなかったんだね!」
「……え、はい!」
「ごめんね。私はてっきり、休みをたくさんつくりたいだけで勝手に祝日を決めたのかと思ってた」
「え、はい」
「私も手伝うよ!」
「え、はい?」
「祝日を、一般市民が関われない横暴を、許さないようにしないとね!」
「え、はい」
「なにをするか調べないと。いそがしくなるよ!」
「あ、えいむさん、だいじょうぶです、ぼくだけでやりますので、いそがしいのはちょっと……」
「スライムさん」
私はスライムさんに手をそえた。
「スライムさんがやる気になってるんだから、手伝うよ!」
「……えいむさん!」
「なに?」
「えっと……ぼくには、べつのしめいがあるので!」
スライムさんはお店の中に向かったので、私は走って追いかけた。
「その使命も手伝うよ!」
「えいむさんはやすんでてください!」
「こうしちゃいられない!」
私は使命感で燃えていた。




