304 スライムさんと無言
よろず屋に向かって歩いていると、スライムさんが入り口から出てくるのが見えた。
ぴょん、とはねたスライムさん。
そのまま裏手に進んでいくので、私も追いかけた。
裏庭の薬草を私がつんで、バケツに入れていった。土をぱんぱんと払うのは、スライムさんには難しい。
スライムさんは私のまわりでぴょんぴょんとびながら、応援してくれる。
バケツを持って水場に行き、きれいに洗い流した。
それを板の上にならべておいた。晴れているのですぐかわくだろう。
お店にもどると、いつのまにかスライムさんがカウンターの上にいて、薬草を用意して待っていた。
それを二人で食べる。
労働のあとだからか、薬草の香りが強く感じられるし、苦味と甘みみたいなものもいつもよりも感じられた気がする。
目をつぶるとなんとなく、薬草をつんだときの様子まで思い出せるようだった。
草のにおいのことを考えていたら、私たちはお店の外に出ていた。
草原で空を向いて横になった。
背中からぽかぽかと、あたたかな草の温度が伝わってくる。土の温度かもしれない。
風がふわりと通っていった。
ちらりと横を見ると、スライムさんもこっちを見ていた。にっこりした。
私は目を閉じた。
いっそう、体がぽかぽかあたたかく感じられた。
腕の位置をなおすとき、ぽきっ、と音がした。これは骨の音なんだろうか。それがとても大きく聞こえた。
目を開ける。
体を起こすと、頭がすっきりしたような気がした。眠っていたのかもしれない。
横にはスライムさんがいた。なんだか、真剣な目で、小刻みに震えている。
止まった。
きりっ、と私を見る。なにか目的が達成されたようだ。
私たちはお店の裏に歩いた。
薬草はすっかりかわいていた。ザルに入れて、お店に入る。
カウンターにならべた。
今日は、私のカウンターの中に入ったまま、お店の入り口を見た。
店員ごっこだ。
するとスライムさんがカウンターから出てお店を出ると、入ってきた。
私が知らないふりをしながら視界の端でスライムさんを見る。
スライムさんはちょっとおどろいたようだったけど、そのままお店に入ってきて、スライムさんも私を知らないふりをした。
ぴょん、とカウンターにのってきたスライムさんは、そのまま知らないふりを続けた。
接近戦の、知らないふり合戦が始まった。




