301 スライムさんとおろし金
「なにこれ」
私は、お店の壁の、ちょっとしたフックにひっかかっているものに目がとまった。
大きさは私の手よりも大きいくらいの金属板で、銀色。
その表面にはトゲトゲが無数にある。
針、というほど長くはない。
近くで見ると、どうやら、金属板の一部が削られるというか、ほじくられるようにして上を向いて、トゲトゲになっているみたいだった。ほじくられているといっても、全部がきれいなトゲトゲが整然とならんでいて、乱暴に作られたものではなかった。
「それは、ぶきです!」
スライムさんが言った。
「武器が飾ってあったら危なくない?」
「けんとか、いろいろかざってありますよ!」
「たしかに」
おっしゃるとおりだった。
でも。
「剣は、ちゃんとさやに入ってるけどこれは、トゲトゲがこっちを向いているから」
私はくるりとひっくり返した。
「ありがとござます!」
「?」
「あたらしい、おれいのしかたです! もじすうをへらすことで、ありがとうございますよりも、すばやく、かんしゃをつたえられます!」
「なるほど。どうも!」
「! どうも、のほうが、はやい!」
スライムさんが、すこししぼんだ。
「でも、どうもだとちょっと軽いよね。どうもありがとう」
「! あざます!」
「もっと短くなった!」
「はい! しんかは、とまりません!」
「やるね!」
私が言うと、スライムさんは、にっ、と笑った。
「ところで、これはどういう武器なの?」
私は、最初のトゲトゲの裏側を見た。
「とげとげで、あいてのからだを、じょりじょりけずっていきます」
「こわい!」
「えいむさん。ぶきとは、おそろしいものですよ?」
「たしかに」
おっしゃるとおりだった。
「あいてのくびをきったり、てくびをきったり、あしくびをきる。そういう、おそろしいものなんです……」
「首ばっかり」
「でもこれは、こつこつがたの、ぶきです!」
「武器にも、コツコツが」
「はい! どりょくは、うらぎらない!」
スライムさんは、むん、とふくらんだ。
「でも」
私は、金属板をはずして、カウンターまで持っていった。
「えいむさん、ぼくをけずるきですか!?」
「削らないよ。……そもそも、スライムさんって、削れるの?」
「えいむさんの、こうきしんを、しげきしてしまった……!」
「ふふ」
私はスライムさんを見た。
「ぶるるるる」
スライムさんが震え上がる!
「それよりさ。これって、なにかに使えそうじゃない?」
「なにか、とは」
「えっとね」
私はお店の外に落ちていた枝を持ってきた。
「それは?」
「これを」
私は、枝の幹? をトゲトゲに刺した。
すると金属板の上で枝が立った。
「これは!」
「花びんに飾っておくのはあるけど、これだったら、また別の飾り方ができるんじゃないかなって」
「なるほど! おかねもうけの、けはいがしますね!」
「スライムさん、お金もうけする?」
「あ、あー……、そのうちやりますー」
スライムさんは目をそらした。
スライムさんがまたこっちを見た。
「そうだ! やくそうも、かざりましょう!」
スライムさんはカウンターから薬草を持ってきた。
「できるかな」
薬草の茎を刺してみる。
くた、と倒れてしまった。
「薬草はやわらかいからだめかもね」
「あー。じゃあ、おかねもうけはむりですねー。むりですー」
スライムさんは、うんうん、とひとりで言っている。
「そんなこと」
「あーやっぱりやくそうをうって、こつこつかせがないとですねー、はいー」
「それはおっしゃるとおりだけど」
「じゃあやくそうでも、とりにいきますか」
スライムさんがお店を出る。
「私も行く!」
「じゃあ、とりたてをたべますか? とるまえにたべますか?」
「……食べくらべ」
「くいしんぼうですね!」
「へへへ」
「ふっふっふ」
私たちは裏庭で薬草の食べくらべをして、おいしそうなコメント競争をした。




