298 スライムさんとストライキ
「やすみを、だせー! やすみを、だせー!」
スライムさんが、お店の前で、お店に向かってなにか言っている。
「やすみを、くれー!」
「どうしたのスライムさん」
「こんにちはを、だせー!」
「こんにちは」
「はっ、えいむさん!」
スライムさんは正気にもどったようだった。
「どうしたの?」
「すとらいきを、しています!」
「すとらいき?」
「ろうどうを、やすんで、いうべきことを、いいます! これは、はたらくものの、せいとうな、けんりです!」
「ほほう……、また難しそうなことを」
「では!」
スライムさんはそう言うと、しゃしゃっ、と素早い動きでお店の中に入っていった。
「スライムさん?」
追いかけて中に入る。
すると、カウンターの上にスライムさんがいた。
「そと、うるさかったでしょう? いやあ、こまりますねえ」
スライムさんは言った。
「うん?」
「ろうどうしゃのけんりってやつですか。やすませろ、やすませろって、うるさくてねえ」
スライムさんは、肩をすくめた人っぽい顔をした。
どうやら、スライムさんは一人二役をしているようだった。
「外の人は、休みたいって?」
「そうそう。ちゃんとしごとができてることを、よろこんでほしいねえ」
「休みは何日あるの?」
「そんなものはないですよ。ろうどうしゃは、はたらくものだ! はっはっは!」
スライムさんは、むしゃり、と動物的に薬草を食べた。
すると、カウンターをおりて、外に出ていく。
私は追いかけた。
「ぐぬぬ。やすみを、くれるきがない! ゆるせない!」
スライムさんは、怒りでぷるぷるふるえていた。
「スライムさん。私も協力するよ」
「! ほんとうですか!?」
「全然休みがないのは、よくないもんね」
「はい!」
「スライムさんは、何日くらい休みがほしいの?」
「ぜんぶです!」
「ん?」
「ぜんぶ、やすみがいいです!」
「……それを、なかのスライムさんに言ったの?」
「はい!」
スライムさんが、きりっ!
「そっか……」
スライムさんが中に走っていった。
追いかける。
「どうだい、はなしにならなかっただろう」
スライムさんがにやりとした。
「そうかもしれない」
私が言うと、スライムさんが笑った。
「だろう。あんなやつ、やめてもらってかまわないぜ!」
「でも、あのスライムさんがやめちゃったら、こっちのスライムさんが全部働かないといけないよ」
「! それは……ええと……」
スライムさんが、なにかごにょごにょ言っている。
「7日に1日くらいなら、いいんじゃない?」
「それは、でも、おみせにくるひとを、がっかりさせることになる……」
「でも、休めないと、どっちもスライムさんがだめになっちゃうかも」
「うむむ……」
「私も、買い物ができなくなっちゃう」
「うん? なにか、おもとめですか?」
「薬草を3つ」
「はい、わかりました!」
スライムさんがカウンターから用意してくれた。
「あれ? 売ってくれるの?」
「はい! もちろん!」
「ふうん……?」
私が手提げに薬草を入れると、スライムさんが出ていった。
追いかける。
「やすみを、よこせー!」
「……」
スライムさんの仕事って、休みってなんだろう。
思ったけれど、深くきかないほうがいいような気がした。
「休みを、よこせー!」
「お、えいむさん、いいですよ! よこせー!」
「よこせー!」




