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294 スライムさんと強風

 風が強くて、家を出た瞬間は、髪の毛をかきあげたみたいに顔があらわになったのを感じた。

 そこから、角を曲がると、横から押されたり、背中を押されたり、いろいろ。


「おっとっとっと」

 私は風に背中を押されるように、よろず屋に入った。

 すぐ入り口を閉める。


「いらっしゃい……」

 カウンターの上のスライムさんが、なんだか、うたがうように私を見ていた。


「こんにちは! どうかした?」

「そとでた、しゅんかん、おわります……」

「なんの話?」


 スライムさんは、カウンターからおりてくると、閉じた入り口の近くまで移動した。


「かぜが、さわいでいる……」

「そうだね。強いよね」

「しにかけました」

「ええ!?」

「そとにでたら、ころころころがって、たいへんなことに……」

「それは大変だ」

「すらいむが、そとでたしゅんかん、おわったわ。これを、ぼくのさいごのことばとします」

「まだ元気だけどね。どうやってもどってきたの?」

「かぜが、ちょっとよわまったので」

「よかったね」

「はい!」


 スライムさんは、入り口の近くの壁に体をくっつけた。


「すごい、おとです」

「体にひびくの?」

「かぜが、ひびいてやがる……」

「私も、髪がばっさばさだけどね」

「かみですか?」

「家を出ると、髪が全部うしろにいく」

「それ、みたいです!」

 スライムさんが、期待の目で私を見た。


 たしかに、背中を押されて入ったということは、出たら前から風が吹いてきそうだけど。

「あけてもいいの?」

「はい!」

 そう言うなら、と私は入り口を開けて外に出た。


「ぐわっ!」

 髪がうしろに引っぱられて、顔面に風が吹きつける。

 ごおっ、という音でうるさいくらいだ。

 ちょっと、ななめから吹いてきているな、と思ったとき。


「うわあああ」

 遠ざかっていく声。

 転がっていく青い透き通ったもの。

「スライムさーん!」



「どうして出たの」

「あやうく、しぬところでした」

 スライムさんは、カウンターの上でぷるぷるふるえた。


「止まってたけどね」

 地面の、たまたまへこんでいるところでスライムさんが止まっていて、風でぷるぷるふるえていた。


「えいむさんの、おもしろいかみのけに、つられてしまいました……」

「私の髪の影響力だったか」

「やっぱり、かぜがつよすぎて、おわってます。やくそう、うまいのに、うれてない」

「お客さん来ないの?」

「しーふーどだけでも、たべてほしい」

「うん?」

 なに?


「はっ! えいむさん、こんなにつよいかぜで、かえれますか!? きょうは、とまりますか?」

「帰れるよ」

「もし、かえれないようなら、いってくださいね! おうえんします!」

「ありがとう! でも、だいじょうぶだと思うよ」

「あまくみては、いけません!」

「じゃあ、見てみる?」


 私は、スライムさんを抱えて外に出た。


「うわー!」

 スライムさんが叫ぶ。


「応援して!」

「うわー! がんばれー!」

「それー!」

 私はスライムさんを抱えて走った。


「うわー! うわー! もっともっとー!」

「それそれー!」

「もっともっとー!」

 私はスライムさんを抱えて全身に風をあびながら走りまわった。


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