293 スライムさんと友達がやってるよろず屋
「いらっしゃい、えいむさん!」
「こんにちは、スライムさん」
「きょうも、いつもの、どうですか!」
スライムさんは、さっそくカウンターの上の皿にのった薬草をすすめてくれる。
「やっぱり、えいむさんは、じょうずですね!」
「ん? なにが?」
私は薬草をふたつにちぎって、スライムさんの口に入れてあげようとしたところで止まった。
「あ、薬草のちぎり方か」
「ちがいますよ! ともだちのかんじが、でてます!」
「どういう……?」
私はスライムさんの口の中に薬草を入れた。
「ほふ!」
「おいしい?」
「はい! そうじゃないです!」
「どっち?」
「きょうは、ともだちがやってるよろずや、なんです!」
スライムさんが言うには、今日のお店は、よろず屋ではなく、友だちがやってるよろず屋。
それは、初対面の相手にも友だちであるかのように接するお店なのだという。
「そういうおみせにすることで、つまらないせっきゃくだろうな……、とおもってやってきた、おきゃくさまが、まるでともだちとはなしをしているかのように、たのしめるのです!」
「ははあ、なるほど」
つまり、なにも知らずに入ってきた人が、初対面として話をしても、スライムさんが友だちとして接することになるのだろう。
そうすることで、ただのよろず屋だったはずが、友だちと話をできる特殊空間に生まれ変わる!
「そういうこと?」
「えいむさんは、はなしが、はやい!」
スライムさんは、きりっとした。
「たしかに、友だちごっこをしながら、遊ぶみたいに買い物ができたら、ちょっとおもしろいかもね」
「はい! りかいが、えられました!」
「でも、友だちって、いろいろあるよね」
「いろいろですか」
「……どうしたのスライムさん、なんか今日、かたくない? もっといつもみたいに楽しくいこうよー」
「どうしたんですかえいむさん」
「えー? ノリ悪いじゃーん。私ら友だちでしょー?」
「はい」
私は、せきばらいをした。
「スライムさん」
「はい」
「こういう友だちもいると思うんだ」
「そんなともだちが!?」
スライムさんは、ぷるんとふるえた。
「そう。世の中には、そういう人もいる。そして……、こんにちは。ごきげんよう」
「ごきげんよう?」
「こういう友だちもいる。さらに」
「さらに!?」
「商品名も、変えたほうがいいかもしれない」
「どういうことですか?」
スライムさんは、かたむいた。
「私たちって、薬草のこと、いつもの、って言ってるときあるでしょ?」
「ありますね」
「ということは、薬草を、いつもの、っていう名前で売る」
「そんなだいたんな!」
「でも、それが友だち」
「だったら……。けんは、ぜんぶ、あぶないやつですね!」
「じゃあ、盾は、あれがあると安全だね、とか?」
「そうですね!」
「すごい。これは、話題になりそうだ」
「おおにぎわいです!」
「宣伝すれば、大人気だね!」
「せん、でん……?」
スライムさんは、かたむいた。
「もしかして、宣伝、する気がない……?」
「おみとおしですか」
「うん」
「やりますね!」
「へへ」
私たちはとりあえず、薬草を、いつもの、で売ることを考えることにした。
「いつもの(薬草)かな」
「それでいきましょう!」




