288 スライムさんと手をあげろ
「てをあげろ」
お店に入ろうとしたら、横から出てきたスライムさんが言った。
頭に棒がのっている。
「?」
「てをあげろ」
「はい」
私は両手を肩の高さにあげた。
「いいだろう。ぼうをとれ」
「はい」
私はスライムさんの頭の上の棒をとった。
「いえ」
「はい?」
「てをあげろと、いえ」
「手をあげろ?」
「ぼくは、てがないですよ!」
「なにを言ってるの!?」
私たちはお店に入って薬草を食べ、ひといきついた。
「いやあ、いいてんきですねえ。いいてんきっていうのは、だれでもおなじじゃないとおもいますけどねえ」
「スライムさん、これはなに?」
私はカウンターの上の棒を見た。
「これは、ないふのかわりです」
「どういうこと?」
「ひとを、おどすとき、てをあげろ、っていいますよね?」
「うん」
「どうしてですか?」
「それは……」
私は棒を手にとった。
「抵抗されないように、じゃないの?」
こっちが武器を持っていて、相手がなにも持っていなければ有利だ。
「でも、そういってるひとって、もう、ゆうりですよね?」
言われてみれば、相手に言うことをきかせているわけだから、かなり有利だろう。
「よくばりですよね?」
「よくばり」
その考えはなかった。
「もう、ゆうりなんだったら、よくばりすぎじゃないですか!?」
「でも、よくばりだから、強盗とかするんじゃない?」
「たしかに!」
スライムさんは、目を大きくひらいた。
「……でも、あくにんを、つかまえるひとも、やるとか」
「そりゃあ、抵抗されたくないから」
「よくばりですよね!」
スライムさんは、目を大きくひらいた。
「守るためだったら、いいんじゃない?」
「まもるためだったら、よくばりも、ゆるされる」
そう言われると、なんだかよくないような気もしなくも、なくもない。
「まものは、そんなことしませんよ。にんげんは、よくばりですねえ」
「魔物はしないの?」
「はい。すぐに、がぶりです!」
スライムさんは、しゃー、と口を開けた。
「スライムさんも?」
「はい。がぶり」
スライムさんは、カウンターのお皿にのっていた薬草を食べた。
「魔物はせっかちなんだね」
「なるほど?」
「人間はよくばりで、魔物はせっかち」
「なるほど……。でも、ほかの、せつもあります」
「どんな説?」
「ては、もりあがったときも、あげる」
「盛り上がったら?」
「はい。もりあがったら、てーあげろー!」
スライムさんはカウンターの上にとびのった。
「えっえっ」
「もりあがったら、てーあげろー!」
スライムさんが、伸び縮みしている。
「はいっ!」
私は手をあげた。
「もりあがってるかー!」
「はいっ!」
「いいぞー!」
「はいっ!」
「わかったかー!」
「スライムさんは、よくばり」
「そうだとも、そうでないともいえないー! ぽんぽんぽーん!」
「なにそれ」
新しいやつが出た。
「りゆうはなーい! えいむさんもー!」
「ぽぽぽぽーん!」
「ちがいまーす! ぽんぽーん!」
「楽しい、仲間と、ぽぽぽぽーん!」
「ぽんぽーん!」
「ぽぽぽぽーん!」
私たちは盛り上がった。




