284 スライムさんと手術
「わっ」
お店に入ろうとしたら、なにかがぶつかってきて、私はちょっとよろけた。
スライムさんだ。
目が、きりっとしている。
「スライムさん、どうしたの?」
「えいむさん。いま、ふらつきましたね?」
「それは、いまスライムさんがぶつかって……」
「ふらつきましたね?」
なにか、決意のようなものを感じさせる視線だった。
「はい。ふらつきました」
「それはいつからですか?」
「いまです」
「なるほど。はやくみつかって、よかった」
スライムさんはますます、きりっ、とした。
「これは、ふらつきしょうの、うたがいがあります!」
「ふらつき症?」
「なまえのとおり、ふらついてしまうびょうきです! これは、いけない……!」
「どうすればいいでしょう」
「……しゅじゅつです!」
「ええっ!?」
「すぐ、じゅんびします! ぎゅっ」
「ぎゅっ?」
私はよろず屋に入って、自分で、横になるためのベッドのかわりの板を運んで、カウンターの前に置いた。
その上に寝た。
スライムさんがぴこぴこやってきた。
頭の上に、小さな透き通った石がのっている。
「では、しゅじゅつをします」
「もうですか?」
「じたいは、いっこくを、あらそいます!」
「わかりました」
私が言うと、スライムさんは、うむ、と言った。
「もし、いたいばあいは、ねてください」
「寝る?」
「ねると、いたくないのです!」
「なるほど……。どういう手術ですか?」
「まず、あたまをきります!」
「頭を!?」
「はい。のうの、よくないところを、とります!」
「それは大変……!」
「たいへんです。でもこれは、えいむさんの、ためなのです」
「わかりました」
スライムさんが私の頭のほうに移動して、見えなくなった。
ぷに、と頭のてっぺんをさわられた感触が。
「きりました」
「もうですか?」
「はい」
「血は出てますか?」
「でてません」
「出てない……!?」
「ぼくくらいになると、そういう、しゅじゅつが、かのうです」
「助かります」
「では、とります。とりました」
「もう!?」
「ぼくくらいになると、さわらなくても、わるいところを、とれます」
「すごい!」
「これです」
スライムさんは、私の近くになにか置いた。
横を向いてはいけないようなので、私は手さぐりでそれを指でつまんだ。
透き通った石ころのようなものだ。小指の爪くらいの大きさだ。
「これが、頭にあったんですか?」
「そうです。これでもう、ふらつきませんよ」
「ありがとうございます」
「いいえ」
スライムさんは、ぷに、と頭のてっぺんをさわった。
「きずぐちを、とじました」
「もう? どうやって閉じたんですか?」
「きずぐちを、あれしました」
「あれ」
「そうです。もう、おきあがってもへいきですよ」
私は体を起こした。
立ち上がってみる。
「ふらつきませんね?」
「はい。まるで、なにもしなかったみたいに、頭もいたくないです」
「そうでしょう。これが、めいいです」
「名医だとありがたいですね」
「はい」
スライムさんは、むん、とすこしふくらんだ。
私は、足の横でスライムさんをちょっと押した。
スライムさんがふらつく。
「えいむさん?」
「スライムさん。あなたは、ふらつき症です」
「ええっ!? ぼくが……!? まさか。ぼくは、めいいですよ!?」
「名医も、病には勝てません」
「ああ……」
「いまから、手術をします」
「えいむさんが、ですか!?」
「実は、私も手術ができるのです。これで、名医が復活します」
「これはすごい! おねがいします!」
スライムさんは、板の上に転がった。
「おとなしくしてください」
「わかりました」
スライムさんは止まった。
「では」
私はスライムさんの頭をさわった。
「どうですか?」
「もう、終わりました」
「もう!?」
「これが、中にありました」
私は、さっきスライムさんにもらった石を見せた。
「これが……」
「よかったですね」
「はい!」
「健康は大事ですよ」
「はい! けんこうは、だいじです!」




