282 スライムさんと、ここは私にまかせて
「じゃあスライムさん、ここは私にまかせて、先にお店にもどっていいよ」
私は、スライムさんを手伝って、お店の裏にある薬草が生えているところで、お店に持っていくための薬草採取をしていた。
そろそろ終わるし、薬草を入れているかごは私が持っていくのだし、と思ったのだけれど。
スライムさんが、ぴたりと止まった。
目をまんまるにして、すこしふるえているのだろうか、体がぷるぷる細かくゆれていた。
「どうかしたの?」
「えいむさん! いますぐ、いまのことば、とりけしてください!」
「なんで!?」
「それとも、こういったほうが、いいですか!? とりけせよ……!!! いまのことば……!!!」
「なんの話!?」
私は草の上でスライムさんとならんで座る。
興奮するスライムさんを、私は頭をぽむぽむとさわって、落ち着かせた。
「それで、どうしたの?」
「えいむさん、しにますよ……!?」
「死!?」
「ここをまかせて、さきにいけ、というと、しんでしまうんです!」
「それはどういう原理で!?」
「……いわば、せかいの、いしです!」
「世界の意思!」
壮大な話だった。
「だから、ここをまかされてはいけません!」
「わかった。じゃあ、スライムさんも一緒にいよう」
「はい!」
スライムさんが見守る中、私は薬草をかごに取って、お店にもどった。
「これで死なない?」
「はい! ふろうふしです!」
「それはそれでこわいね」
「はい!」
「えっと」
私は、持ってきた薬草を見た。
「土はどうする?」
「ちょっと、ついているほうが、しんせんに、みせかけられるので、そのままで!」
「新鮮だけどね」
外で軽く土を払った薬草を、カウンターの中にならべた。
「まだやることある?」
「あ、わすれものがないか、かくにんしようとおもってました!」
「じゃあ、ここは私が受け持つから、スライムさんが見てきていいよ」
「わかりました! だめです!」
「どっち!?」
「えいむさん、また、ここをまかせてさきにいけ、になってますよ!」
「そっか。……はたして、そうかな?」
「えいむさん?」
スライムさんは、目をぐるりとまわした。
「えいむさん……。ぼくの、いうことが、りかい、できない……? ! もう、しんでいる!?」
「たぶん生きてる」
「では……?」
「ここをまかせて先に、がだめなのはわかったけど」
「おわかりですか」
スライムさんは、ほっとしたように息をはいた。
「よかった……」
「でも、私、行かないよね」
「? どういうことですか?」
「私はずっと待ってるんだから、先に行ってもらって、追いかけるんじゃないでしょ? その場合は?」
「! えいむさんは、こない……!」
「そう」
スライムさんは、きっ、と私を見た。
「……きてください!」
「ええ!?」
「ぼくだけ、いかせるんですか! つめたいですよ!」
「でも、行ったら死んじゃうんでしょ?」
「たしかに! じゃあ、ぼくはどうすればいいんですか!」
「うーん」
私は考えた。
「一緒に行けばいいんじゃない?」
「おお! たしかに!」
「お店の中はからっぽになるけど」
「そんなささいなことは、どうでもいいんですよ!」
「ささいなこと!」
「えいむさんにくらべれば!」
「! スライムさん!」
「えいむさん!」
「うれしいことを言ってくれてるようでいて、お店を雑にあつかってるよ!」
「ふふ……。おみせのそとにいるだけなので、からっぽというのは、おおげさですよ!」
「たしかにね!」
私たちはゆっくり歩きながら、お店のまわりを一周した。
特になにも落ちていなかった。
「なにもないね!」
「はい! あんしんです!」
「忘れ物とはなんだったのか」
「それは、ぼうきゃくの、かなたです……」
せっかくなので、私はこっそりと関係ない草を拾って、カウンターの上に置いてみた。
しばらくしてからスライムさんが、こんなところに、やくそうが……!! やくそうが……!? と困っていた。
私はそれを、うんうん、と見ていた。




