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28 エイムと車

 よろず屋の外にあった、黒い箱のようなものを見ながらお店に入ろうとしたら、スライムさんが飛び出してきた。

「わっ」

「えいむさんこんにちはー!」


 私の横を通り過ぎたスライムさんは、その箱のようなものの下にスルリと入って、また出てきた。

 そしてよろず屋に入っていってしまった。


 私は、箱のようなものをよく見る。


 大きさは、私のベッドくらい。

 天井のない箱のような形をしている。


 中は、前側に椅子が外を向いて二つならんでいる。右側の椅子の前には、短い棒の先に円盤のようなものがついていた。

 椅子の横には扉がついている。

 また、箱の下側には荷車のような車輪がついていた。


 スライムさんがまたお店から出てきた。

 なにかを持ったまま箱の下にすべりこんでいく。


「スライムさん?」

「なんですか」

 くぐもった声が聞こえる。

「これ、なに?」

「くるまです」

「車?」

「じどうしゃとも、いったり、いわなかったりです!」


 スライムさんが出てきて言う。

「いっしょにのりましょうね!」

「え?」


 私がぽかんとしていると、スライムさんはまた、お店にもどっていった。


 なんだろう。

 この席で待っていればいいんだろうか。


 椅子の横にある扉を空けて、中に入って右側の椅子に座ってみる。

 なんだか動く余裕がなくて、せまくて居心地が悪い。


 そのとき、足でなにかをふんだ。


「わっ!」


 車、が動き出した。

 ぎゅんっ、と動き出した車はまっすぐ進む。

 お店の前の草原から、がたん、と道に降りて、ぐんぐん速度を上げていく。


 私が走るよりもずっと速い。

 馬より速い。

 景色が嘘のように早く切り替わっていく。


 私は振り落とされないよう、体をふんばって、席の前についている円盤をつかんだ。


 車の進路はだんだん道の真ん中から外れていき、横に生えている木が迫ってきた。

 ぶつかる。


「わっ!」

 私は思わず、目の前にある、丸い円盤のようなものを右に回したとき、車の進路が右に。


 道の真ん中にもどった。


 まだ車はすごい速さで進んでいる。

 でも、円盤で進路の調整ができるようだとわかると。


「こう、かな!」


 道なりに進むことができた。


 風をびゅんびゅん切って走る。

 ガタガタする地面の上でも、硬い椅子に座っておしりが痛くても、そんなの小さいことに思えた。

 どこまでも走っていけそうだ。


 そう思っていたのに、急に、車は力をなくしたように速度を落とした。

 しゅるしゅるしゅるしゅる、と速度を落として、止まった。

 

 私は外に出た。

 さっきまでは全然聞こえなかった鳥の声が、あちこちからしているのに気づいた。

 

「あー、だいじょうぶでしたかー!」

 見ると、よろず屋の方からスライムさんが走ってくるところだった。

「あ、うん」

「あぶなかったですね!」

「なんか、椅子の下にあるやつをふんだら、走り出して」

 私は思い出しながら言った。


「そうなんです! それが、あくせるです!」

「アクセル?」

「これは、がそりんえんじんではないのですけれども! あくせるは、あくせるです!」

「ふうん?」

 よくわからないことを言う。


「まあいいや。じゃあ、一緒に乗って帰ろうよ、スライムさん。もっと速く走りたいな!」

「え?」

「速いと気持ちいいんだね。もっともっと、速くしたい」

 車というのはこんなに気持ちがいいものだとは知らなかった。


「えっと、でも、あぶないので」

「危ないのが気持ちいいんだよ」

「ええ……」

「ぎりぎりで木をよけたとき、すっとしたなー」

「ええっと……」

「ほら、スライムさん、燃料燃料!」

「えっと、もう、ねんりょうはつかいはたしてしまいました」

「ないの?」

「はい。けっして、えいむさんがきけんなので、ないと、うそをついているわけではありません。ほんとうにありません」

 スライムさんはなんだかかたい表情で言った。


「そう。残念。じゃあ、明日ね」

「あしたもないとおもいます。きっと」

「そんなに貴重なの?」

「そうです。ありません。きけんだからうそをついているわけではありません」

「ふーん。残念。じゃあ、私が買ってこようかな」

「すごくおたかいのでむりです! ぜったいに!」

 スライムさんはむきになって言った。


「そうなの?」

「はい! いえがかえます!」

「えー、それじゃむりだ」

「そうでしょうそうでしょう。おとなしく、はこのなかみあてをして、あそびましょう」

「うーん」

「さあ、かえりますよ」


 私は、燃料入手は絶望的だ、という話を聞きながら、スライムさんと一緒に車を押して帰った。

 気持ちよかったのに。

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