278 スライムさんと上流階級ですわ
「あら、スライムさん」
「まあ、えいむさん」
私たちは、街角で出会った。
正確には、街角ということになっている、よろず屋の前の丁字路だ。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう。おほほ」
スライムさんは、微笑んだ。
「えいむさんは、きょうは、こんなところでどうしたのかしら?」
スライムさんは言った。
「ちょっと、お買い物に」
「まあ。どういうものを?」
「薬草ですのよ」
「まあ。それはけっこうですわね」
「そうなの。おほほ」
「おほほ」
私たちは、あまり口を開けずに笑った。
「スライムさんは、どんなごようかしら」
「わたくしは、おさんぽですのよ」
「まあ。けっこうですわ。どちらまで?」
「そのあたりですのよ」
「いいですわね」
「そうなの。おほほ」
「おほほ」
私たちは、あまり口を開けずに笑った。
「げふっ」
スライムさんが、水っぽいものをはいて、倒れた。
「スライムさん!?」
私はスライムさんを抱き起こした。
「どうしたんですの!?」
「ぼくは、どうやら、じょうりゅうかいきゅうごっこに、むいていないようです……」
「どういうことですの!?」
「からだが……、からだが、きょひ、しています……」
「スライムさんが、やろうっておっしゃったではないですか!」
「じぶんは、あこがれていても、せっしゅすることが、できない……。からだに、とりいれると、きょひはんのうが、おきる……。そういうのを、なんていうか、しってますか……?」
「知りませんわ。なんですの?」
「ぼくも、おぼえてません……」
スライムさんが目をつぶった。
「スライムさん? スライムさん?」
「えいむさん……」
「なんですの?」
「えいむさんは、じょうりゅうかいきゅうが、じょうずです……」
「うれしいですの」
「ぼくの、ぶんまで、じょうりゅうに、なって、くだ、さい……。がくっ」
「スライムさん? スライムさん? ……スライムさーん!」
私の声が、すこしまわりにひびいた。
私は、スライムさんのぶんまで、上流階級に、なっていく。
だから、安らかに、眠ってね。
スライムさん……!
「よう、えいむさんよ」
「おう、スライムさんよ」
「ちょうしはどうだい」
「ボチボチだな」
私が言うと、へっへっへ、とスライムさんは悪い顔をする。
負けずに私も悪い顔をした。
「よう、おまえは、ええと……。きょうも、だれかをだまして、かねをまきあげたのか?」
「もちろん。親から金をまきあげてやったさ」
私は10ゴールド硬貨を見せた。
「わるだな」
「へっへっへ。スライムさんは、どうなんだい?」
「おれは、おれは……。やくそうを、みせに、もっていくのを、さぼってやったぜ」
「おお、悪だな」
「へっへっへ」
スライムさんが悪い顔で笑う。
「どうやら、おれは、わるいほうが、にあってるみたいだぜ」
「私も、悪いぜ?」
「……えいむさんは、じょうりゅうも、わるも、どっちもできて、すごいぜ」
「てれるぜ」
「きょうは、どっちがわるいか、しょうぶだな」
「望むところだぜ!」
悪に染まった私たちによる、悪悪同盟が結成され、それはそれは悪いことが行われた。
「あー、スライムさん水こぼしたよー」
「それは、むいしきわるなので! ぼくの、さいのうです!」
「悪だね!」
「はい! じゃなくて、おう!」
「おう!」




